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2 15, 2019

市民ランナーが知っておきたい
マラソン大会の「救護体制」

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全国各地で開催されるマラソン大会。市民ランナーが安心して走るために万全の救護体制は欠かせません。「国士舘大学モバイルAED隊」の活動から、スポーツイベントにおける救護体制のあり方を考えました。

マラソン大会の「救護体制」はどうなっている?

12月の寒空の下、第43回「サンスポ千葉マリンマラソン」が開催されました。1976年から千葉市で開催され、毎年1万8000人を超えるランナーが参加する人気のマラソン大会です。健康志向の高まりで、マラソン大会は全国的に増えています。市民ランナーにとって大会選びの基準は、シーズン、走行距離、制限時間の有無、コース周辺の風景など、人それぞれですが、ぜひ加えてほしいのが、マラソン大会主催者側の【救護体制】です。

 

スポーツの現場は、競技者の心肺停止発生リスクと隣り合わせです。しかも、数千、数万人のランナーが一斉に走るマラソン大会は、心肺停止発生の件数も高まります。千葉マリンマラソンにおいては、救急救命医療を学ぶ学生、救急救命士を中心とした「国士舘大学モバイルAED隊」が出動し、コースの各所で万全の救護体制を整えています。

 

救急救命医療の第一人者であり、モバイルAED隊を率いる国士舘大学の田中秀治教授は、マラソン大会における心肺停止のリスクについてこう語ります。

 

「私たちは2007年以来、マラソン大会の救急隊として活動してきました。この間、救護にあたった心肺停止の症例件数は、2018年11月時点で36例、うち9割以上は救命に成功しています。発症者の平均年齢は約49歳ですが、運動習慣のある健康な20代が発症する事例も少なからずあり、誰もが心肺停止を起こすリスクがあるのです」

競技別の心肺停止リスク

生死を分ける「3分以内」の壁をどう守るか

千葉マリンマラソンにおける国士舘大学モバイルAED隊は、フィリップスが提供したAEDを携帯し、参加ランナーの安心・安全に役立ていただいています。大会当日は、国士舘大学の救急救命医療を学ぶ学生とOBの救急救命士の2名が1チームとなり、計12チームがコース各所でAEDなどを携えて待機・巡回。レスキューの要請が入れば、マウンテンバイクですぐ現場に駆けつけて処置にあたります。

 

「足をくじいた」「コースで転倒した」「具合が悪くなった」などの急病・ケガにもきめ細かく対応。コース後半沿いにある救護テント(本部)では、モバイルAED隊の司令塔として、田中教授含む5人がAED隊に指示を出しています。

 

この日は、ゴール直後のランナーが1名、心肺停止を発症しました。直ちにモバイルAED隊が駆けつけ、AEDと胸骨圧迫を実施。その後、心拍が再開となり、無事に心肺蘇生を果たしました。田中教授は、心肺停止が発生した際、この「迅速な対応」こそが、予後を大きく左右する最大の要素だと指摘します。

 

「心肺停止の蘇生は、3分以内のAEDが目標です。3分以内にAEDを実施することができれば、救命率は70%で、5分で50%まで低下します。1分ごとに救命率は7〜10%低下し、9分を経過すると10%まで落ち込みます。

 

マラソン大会のような広大なエリアで繰り広げられるスポーツイベントでは、3分以内の救護を実現するために、モバイルAED隊のような救護スタッフをコースに配置、もしくは巡回させることが不可欠です。さらに、発生時の連絡や連携についてあらかじめ訓練・確認を徹底しておく必要があります。人員配置、AED、連携体制——この3つがそろって、初めてマラソン大会における救護体制が整ったといえます」

心肺停止からの時間と救命率

私たちこそが、命を救うバイスタンダーになれる

国士舘大学モバイルAED隊は現在、マラソン大会を含め年間約80ものスポーツイベントで活躍しています。また、国士舘大学モバイルAED隊をお手本にして、AEDや応急処置の講習を受けたボランティアスタッフをコースに配備するなど、救護体制を強化するマラソン大会も少しずつ増えています。

 

「救護体制の強化・徹底は、大会主催者の果たすべき役割です。また、参加者側も、大会運営の救護体制を確認することが必要でしょう。それが万が一のとき、自分の命を守ることにつながります。こうした救護体制づくりは、みんなの協力が必要です。そこはフィリップスのような企業の協力や、ボランティアの募集、さらには参加者から寄付金を募るなど、みんなで知恵と力を出し合うことで、スポーツイベントでの安心・安全をつくりだしていければと思います」(田中教授)

 

日本は、年間2,000大会以上のマラソンやロードレースイベントが行われるスポーツ大国です。多くの人がスポーツに親しみ、スポーツイベントに出場、観戦する機会はこれからますます増えていきます。

 

「全国スポーツ競技団体、体育協会、スポーツ施設協会など228団体を対象に行なった日本AED財団スポーツ部会調査(2017年)では、競技中の事故や急病発生時の対応プロトコルを用意していると答えた団体はわずか36%にとどまりました。スポーツイベントにおけるさまざまな危機に対する管理体制の構築はまだ万全とはいえず、各団体が早急に対応策を講じていく必要があります」(田中教授)

 

今回の千葉マリンマラソンでは、フィリップス社員が「Run with heart」と書かれたブルーのTシャツを着て見守りランナーとして参加し、万が一、具合が悪くなったランナーが発生した際の救助に備えました。

 

「じつは命を助けることができるのは、運営側のスタッフやボランティアだけではありません。1分1秒でも早い処置を必要とする心肺停止では、そこに居合わせた市民がバイスタンダー(発見者)となって行動することが、心臓突然死を防ぐ最大の防御策となるのです。みんながお互いを助け合うことができるようになれば、国内で年間13万もの人が亡くなっている心臓突然死の数は大幅に減るはずです。そのために、マラソンに参加するランナーに、応急手当てやAED講習会の参加を義務づけるのもアイデアの一つです。大会参加を機に、一度AEDや救急救命処置の講習を受けておく。そうすれば、日常生活でも身のまわりの大切な人を助けられるようになる。まさにいいことづくしだと思います」

マラソン大会で活躍するモバイルAED隊

世界の権威の医学雑誌でも取り上げられる

国士舘大学では、マラソン大会で心肺停止が発生した際に迅速な対応が予後を大きく左右するとして、大会主催者は心臓突然死のリスクを認識してバイスタンダーによるCPRとAEDによる電気ショックの重要性を訴え、モバイルAED隊を編成して活動していますが、その取り組みは、世界の権威の医学雑誌『The NEW ENGLAND JOURNAL of Medicine』でも紹介。国内外で、注目を浴びています。

 

これから、日本国内でラグビーワールドカップやオリンピックなど、さまざまなスポーツの国際大会が開催されます。そのとき、どのように円滑に運営され、危機対応できるかで、主催国・主催者側の真価が問われます。さらに心肺停止を起こした人の命を救うには、周りに居合わせた人の対応なくしては不可能です。

 

今回ご紹介したようなスポーツイベントにおける救護体制づくりは、私たち一人ひとりも考えていくべきテーマなのです。(取材・文 / 麻生泰子)


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