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9 18, 2018

街全体を「救護チーム」に!
あなたが創る新しい救急医療体制

ページを読む時間の目安: 3-5 分

年間13万人が心肺停止で倒れています。社会復帰率はわずか13%。しかし、目撃した突然死に対し、AEDを使えば半数近くを救える可能性があります。そのためには皆さん一人ひとりの力が必要です。

心停止からの社会復帰率13%という厳しい現実

駅やショッピングセンターなど人が集まる場所でAEDを目にすることも増えてきました。いまや日本のAED普及率は世界一。それだけ心肺停止を起こした人を助けられる確率も高いのでしょうか? 救急救命医療の第一人者である田中秀治教授に話をうかがいました。

 

「心肺停止を起こす人は国内で年間13万人にのぼります。そのうち、命を落とすことなく社会復帰できた人の割合はわずか13%にとどまります。一方、他の先進国では、心肺停止になった約7割の人が近くにいた人から心肺蘇生を受け、シアトルでは62%、コペンハーゲンでは64%という高い蘇生率となっています。」

日本では、高いAED普及率に比して、活用が進んでいないということですね。もし、もっとAEDを使う人が増えて、バイスタンダーによる救護が行われれば、13%という数字は大きく変わるのでしょうか?

「おそらく50%以上の方が、社会復帰できるようになると考えられます。日本ではAED普及は進んでいますが、次の課題となるのはAEDを使う人の育成。国民の誰もがAEDを使いこなせるようになることが私たちの最終目標です。


私は、日本は“思いやりの国”だと思います。人に気遣い、お互いを思いやる繊細な感性や文化が古来より育まれてきました。これからもっとも大事にしていかなければならないのが、他者に対する思いやりを次の世代に伝えていくことではないでしょうか。AEDを使う知識がより普及していけば、お互いの命を守りあえる社会に進化していくはずだと考えています」

消防署や日本赤十字社などで受講できる

AEDを使った心肺蘇生は誰でもできる

なぜ、日本は世界一のAED普及国でありながらも、使う率が低いのでしょうか。AEDの存在は知っている、運転免許講習で学んだ経験がある、そんな人も少なくないはずです。

 

「どんなにAEDを理解していても、“知っている”だけのレベルでは、人が目の前で倒れたいざというときに “頭が真っ白になり”“体が動かない”のが現実です。瞬時に体が動くまでになるには、知識やスキルを定着させることが必要です。そのためには、消防署や日本赤十字社などで開催しているAED講習会をくり返し受けてほしいと思います。学校教育の場で伝えていくことも重要で、現在、中高校の保健体育の授業でAEDを使った実践的教育を行なう割合は、我々が日本臨床救急医学会の学校へのBLS普及プロジェクトなどを始めてから少しずつですが増えてきており、現在では全体の約50%の学校が授業でAEDを使った実践的教育を行っています。平成30年の文部科学省の学習指導要領改訂でも心肺蘇生の実習が盛り込まれているので、今後もっと増えることを期待したいですね」

AED活用に足りなかったのは経験値。訓練を重ねることで、誰でも行動できるようになるのです。
「ただ、目の前で人が急に倒れたときに、心停止で倒れたのか、あるいは意識を失って倒れたのかは、なかなかわからないでしょう。ここがAEDを使う大きな障壁となっているのです。知っておいてほしいのは“あえぐような呼吸”があったら、それは死戦期呼吸と言って、すでに心臓が止まり、脳が低酸素状態になっているサインだということです。人は心臓が止まったら、すぐ動かなくなるわけではありません。まず心臓からもっとも遠い大脳に酸素が届かなくなって意識を失いますが、呼吸中枢のある延髄ではまだ酸素が少し残っており、その間、呼吸はしばらく続きます。それは、呼吸中枢が大脳より心臓に近い位置にあるためで、あえぐような深い、“ハッー”という不規則な呼吸が1〜2分間は続くのですが、これは長く続きません」


心停止に見慣れていない一般市民では呼吸が不規則でも続いていたり、口が動いていると、呼吸をしていると勘違いし、AED使用の判断が遅れることが往々にしてあると田中教授は指摘します。

「あえぐような不規則な呼吸があれば、即、心停止と判断してください。そして胸骨圧迫を開始し、AEDを使用してください。正確な判断はAED内部の診断システムが行いますから、まずは行動が大切なのです」

国士舘大学大学院・田中秀治教授

医療の限界を超えるのは、あなた自身の力

田中教授は30年以上にわたり救急医療体制の向上に尽力し、救急救命士の育成に取り組んできました。様々なとりくみにより日本の救急医療の水準は年々上がってきましたが、さらに救命率を上げていくには“限界”があることに気づいたといいます。

「タイムリミットは、心肺停止から約5分以内とされます。この時間内に医師や救急救命士が駆けつけられる確率は極めて低い。ですから、すぐそばにいる人がAEDを使用して胸骨圧迫まで行う救護活動が重要になります。そして、これからますます多くの外国人観光客の来日が今後想定されますので、5分と言わず、心肺停止から3分以内のAEDによる救護を目指して取り組んでいきたいところです。街中で倒れた人がいたら、救急専門医である私ができることも、みなさんができることは同じです。AEDを取りにいき、胸骨圧迫とAEDで心肺蘇生をはかる。資格や肩書きに関係なく、誰もがファーストレスポンダー(最初の救護者)になれるのです」

誰もがファーストレスポンダーになれる。そのことに気づき、田中教授は市民の方が心肺蘇生法を学べるチャンスを広げることに長年、力を注いできました。


「人の命を救うことができるのは、医師や救急救命士だけではないのです。皆さん一人ひとりが誰かの命を救える存在なのです」

心臓突然死は、ある日突然、前ぶれもなく訪れます。それは高齢者や働き盛り世代に限らず、あるいは乳児、学齢期の子どもにも起こりうるのです。自分の大切な人に「もしも」があったとき。そばに居合わせた人にどうか手を差し伸べてほしいと思うならば、自分自身もその一歩を踏み出せる人になるべきです。

フィリップスでは、地域の人、行政、企業が手を結んで、町全体を「救護チーム」にするHeart safe cityの取り組みをスタートしました。AEDを中心としたヘルステック、大型施設における救命救助のEAP(緊急対応プラン)体制の確立を推進し、みんなが命を守り合う社会づくりを目指していきます。(取材・文/麻生泰子)

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