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11 01, 2018

「Heart safe city」地域で助け合う「近所力」とは?

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困ったとき、頼りになるのはご近所の力。AEDの知識を普及させ、安心して暮らせるまちづくりに尽力する人たちがいます。そこで今回は、今の日本に必要な「近所力」を実現されている町内会活動をご紹介します。

地域の人が使えるAEDを自宅兼オフィスに設置した理由とは?

福岡市の中心、博多区麦野にある安田哲夫さんの自宅兼オフィス。大通りに面した窓辺にはAED が置かれています。このAEDの存在は、いまや地域の人の多くが知るところ。緊急時には窓を破ってAEDを持ち出して良いとの掲示が貼り出されています。 なぜ、安田さんはご自宅兼オフィスにAEDを置くようになったのでしょうか。

「10数年前、ホテルのパーティーで参加者が倒れた場面に居合わせたのがきっかけでした。周囲の人はどうしていいかわからずパニック状態で、とっさに体が動きました。周りはどうすれば良いか躊躇しているようで、こういった状況では助かるはずの命も助けられないと痛感しました」

その後、安田さんは身近な人に応急手当ての方法を教えていこうと思い立ち、AED使用法や気道異物除去法、止血法などの指導ができる「応急手当普及員」の資格をとります。

 

「心肺停止した人の命を助けるためには、手当の方法を教えるだけでなく、心臓の異常な震えをリセットするAEDが必要不可欠となります。ところが、近くにすぐ使えるAEDが少ないことに気づいたのです。学校やスーパーにあっても24時間いつでも使えるとは限らない。だったら自分で用意しようと考えたのです」

 

安田さんが自宅兼オフィスの窓辺にAEDを置いて誰でも使えるようにしたのは、消火器からヒントを得たといいます。

 

「東京に行ったとき、両国や渋谷など人口過密エリアは100mおきに消火器が設置されていることに気づきました。火事を見つけたら、誰でも消火器をとって消火活動ができる。だったら人の命を助けるAEDも、町内に設置されているべきじゃないかと考えたのです」

 

安田さんの住むエリアは博多区の中で板付校区と呼ばれ、22の町内会で成り立っています。そのうちの「麦野4丁目一区」の町内会長を務める安田さんは、近所の人に呼びかけて人命救助法をレクチャーする緑地清掃におけるブルーシート救命講座を毎月開催するようになります。講習会は毎回20名以上が参加。評判が評判を呼び、他の町内会で出張講習会もするように。また、安田さんの町内会にならい、AEDを設置する町内会も現れました。

安田哲夫さんの自宅に設置されたAED

安田さんの事務所の窓辺に置かれたAED。緊急時には窓を破って取り出すようにとの張り紙も。

「知る」ことで、被害は最小限に抑えられる

安田さんのAED講習会が人気を呼んだのは、どうやら「知る楽しさ」が理由にあるようです。

「AEDは生死に関わる緊急時に使うものですから、怖いもの、触ってはいけないものというイメージがあります。まずはそのイメージを払拭したいと思ったのです。そもそもAEDの意味を知らない人も多い。自動体外式除細動器(Automated External Defibrillator)の略なのですが、最初からそれだけ教えても面白くない。ですから『A(あんたは)E(えらい)D(どえらいやっちゃ!)の略です』と冗談を言って、まずはみんなに笑ってもらいます。

また、使い方のレクチャー前に、皆さんがなるほどと興味をもってくれるような話をします。例えば、〈心肺蘇生〉ってよく聞くけど、なぜ心臓と肺がセットなのかわからない人も多いですよね。全身から集まった血液は、心臓から肺に送られます。

 

肺に流れた血液は、二酸化炭素と酸素を交換します。酸素をもらった血液は、また心臓に戻り、心臓の力で全身へと送り出されるのです。つまり、酸素供給という心臓の役割を果たすには、肺との共同作業が不可欠。だから〈心肺蘇生〉なのですね」

 

講習会では、参加者が自分の胸に手を当て、心臓の大まかな位置を把握しながら血の流れがどういった動きをしているかも伝えています。そうすることで、参加者がより興味を持って話を聞いてくれます。

 

「1回の心拍で流れる血液量は70ml。350mlペッドボトルの約5分の1となります。皆さんにペットボトルに入れた色水をお見せします。さらに、胸骨圧迫によって心臓がどう動くか、心電図のグラフも見てもらいます」

 

日頃はあまり意識することのない「心臓」。手を当てて、その動きを感じることで、ここに命が息づいているという実感が深まります。胸骨圧迫とAEDによる心肺蘇生は、心臓が再び自らの力で正しく拍動するまで導いていくもの。手順を覚えるだけでなく、その効果をよく理解していれば、戸惑いも払拭されやすくなります。

 

「私も一般市民。『AEDで救助をするのは怖くないですか?』って聞かれると、『そりゃ怖いですよ。だから、胸骨圧迫も怖かったら、できる範囲の強い力でいいのです。まずは勇気を持って行動することからはじめましょう』とお話しします」

 

さらに、安田さんがこだわるのは、なるべくリアルなシチュエーションでAED体験をしてもらうこと。

 

「AEDを設置場所から外すと、周りの注意を引くために大きなアラーム音が鳴ります。また、AEDの胸に貼るパットは粘着力がかなり強く、肌に貼ったら剥がれにくい。これらを緊急の現場で初めて知ると、救助を行う身としてはいちいち動揺します。でも、とても大切なことなので、仮の練習用ばかりではなく、パッドからAEDまで実物で、ある程度まで体験してもらうことがなによりも重要と考えています。あらかじめ〈知る〉ことができれば、それは恐怖ではなくなります。世の中では〈防災・減災〉の重要性がよく語られますが、私は、まず、起こりうることを知り、対処法を学ぶ〈知災〉が必要だと思うのです」

 

災害や心肺停止といった緊急時にどんな兆候が出るかをあらかじめ知っておき、その対処法を知っておく。〈知る〉ことで、被害を最小限に食い止める可能性も高まるはずだと安田さんは考えます。それには、小さいうちから〈知る〉環境をつくることも大切と感じ、小学生を主な対象にした親子教室も地域で開催しています。

 

「AED講習だけでなく、おいしい防災食の料理教室、災害用トイレになるマンホール探しなど、“学び遊び”の要素も入れて楽しんでもらうお父さんお母さんが救命救助をするのを見ながら、お子さんには人を呼びに行くことや、AEDを取りに行く役割をお願いします。『自分にもできた!』という思いとともに、AEDの使い方や災害時の行動を自然と覚えてもらえたらいいなと思います」

福岡市博多区在住の安田哲夫さん

災害が多い国ニッポン。必要なのは「近所力」

みんなが安心して暮らせる地域をつくるために、安田さんが目指すのは「近所力」のある町内づくりです。AEDの救急救命体制の強化のみならず、麦野4丁目一区地域の防災・防犯にも長年取り組んできました。


「地域は高齢化が進んでいるし、最近は日本全国で自然災害も増えています。いざ困ったとき、頼りになるのがご近所とのつながりなのです」

 

地域の安全のために6年前から始めたのは、青色防犯パトロール(青パト)。板付校区、町内会の有志30名余が当番制で、下校時刻と夜中の1日3回、地域を巡回しています。退職後の仲間のほかに、子を持つ多くのお母さんがたが積極的に参加くださっています。安田さんの巡回チームは、町内会の副会長を務める安部佳己さんと、青パトのドライバー資格をもつ外園博教さん。お2人とも安田さんと同世代で、地域への思いをともにする仲間です。

 

「サラリーマン時代は、家と会社の往復で自分が住んでいる地域を全然知らなかった。地域のためっていうと大げさですけど、結局は自分のため。みなさんにのお役に立てるのがうれしいんです。人生百年時代、この先数十年は、人に役立つことをするのが私の目標です」(外園さん)

 

「青パトに乗っていると、みんなが挨拶してくれるのがうれしいですね。近隣に顔見知りが増えると、声をかけたり見守ったりする機会が増え、自然と地域の安全が高まります。新しい住民の方も増えていますが、祭りや町内活動を通じて交流を深めていきたいですね」(安部さん)

 

麦野4丁目一区の町内会は、戸建て中心ですが330世帯ほどありますが、高齢化も進んでいます。75歳以上の高齢者は、安田さんの巡回チームメンバーで担当を決めて、たまに様子をたずね、相談などに応じるようにしています。

パトロールに出かける安田さんたち

「私の携帯電話番号は、町内の全員に公開しています。そうすると『おじいちゃんの様子がおかしい』『押し売りがしつこくて困っている』『捨て猫が庭にいる』などと、なんでも電話がかかってきます。救急や警察はすぐには駆けつけられないから、まず近所の力で今できることをお手伝いするのです」

 

地域のために力を尽くしている安田さん。その活動を支えるのは、どのような思いなのでしょうか?

 

「私は大学進学を機に出雲から移り住みました。郷里の両親は父は106歳、母は88歳まで長生きしました。しかし、両親のそばに住んで親孝行することは叶わなかった。その思いが近くにいるお年寄りのために『何かせんといかん』という気持ちにつながっているのかもしれません。それに私自身、若い頃は仕事一筋で、地域とは深く関わってこなかったのです。でも過労により40代で倒れたとき、お金より、仕事より、大事なものが近くあると気づいたのです」

 

フィリップスが推進する町全体を“救護チーム”にする〈Heart safe city〉構想ともリンクした麦野3丁目の町内会の皆さん。安田さんたちのように、自分のできることから身近な人のために少しずつ力を出し合えば、今住んでいる町が、より安心して暮しやすい場所に変わっていくはずです。(取材・文/麻生泰子)

 

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