Gyro Cup は全国 27 のユーザー会を 9 ブロックに分け、選出された 9 名の代表者と 3 名の推薦枠、合計 12 名のファイナリストが MRI のテクニックを競い合う大会です。Gyro Cup は 2010年に第 1 回が開催され、今年で 8 回目を迎えます。これまで多くの発表が行われ、いずれの演題も “創意工夫”、“画質”、“臨床的実用性” をあわせ持ったアイディア溢れる内容が報告されています。現在では、Gyro Cup のコンセプトが海外にも受け継がれ、世界規模の大会へと発展しようとしています。
Gyro Cup から発信されたアイディアは MRI の新しい手法の発展に大きく寄与し、インパクトある臨床応用へと繋がっています。今後のさらなるアイディア溢れる発表に大きな期待が集まっています。
第 8 回目となる Gyro Cup 2024 が 2024 年 9 月 20日に無事に終了いたしました。
6 年ぶりの対面形式での開催で大変な盛況をいただき、約 260 名が参加された会場では終始活気に満ちた雰囲気に包まれていました。当日ご参加いただいた皆様、12 名のファイナリストと特別審査員の先生方、予選会にエントリーやご参加をいただいた皆さまのご協力と熱意により、予選から本選までを通して充実した内容でイベントを進行することができました。誠にありがとうございます。
今回も 50 演題を超える応募総数から選ばれた 12 名のファイナリストの先生方による熱き戦いとなりました。Award を受賞された先生方の発表内容をご覧ください。
推薦枠:東関東ブロック
中西 一成 先生
千葉大学医学部附属病院
びまん性軸索損傷や海綿状血管奇形、救急対応における susceptibility vessel sign の描出など SWIp の臨床的ニーズが高まる中で、MRI 担当者全員がオーダーやカルテのコメントから追加撮像の判断を確実に行うことは容易ではありません。また、救急対応や短い検査時間の中では 3D である SWIp の追加撮像時間が重くのしかかります。SWALLOW は SWIp と MRA を同時撮像することでこれらの問題を解決することができます。
SWALLOW においては、マルチエコー撮像である SWIp の 1st エコーを out of phase の 3.5ms(3.0T)に設定し、MRA としても利用します。その際、Angio/Contrast enh. を inflow に設定できないため、通常の MRA のように multi-chunk 設定すると Venetian blind artifact が発生します。そこで、TR30ms、FA13° と”低空飛行”の設定することで single-chunk 設定でも飽和効果を回避し、末梢血管の描出能を確保した MRA を取得します。また、SWIp のコントラストについても、従来法より脳実質、CSF の信号が平坦化して静脈とのコントラストが上昇し、問題の無い画像を得られます。
さらに、SWIp で再構成されるのは SW-M、SW-P 画像のみであり、通常は各エコーの画像を取得することはできませんが、その問題も Save raw data を yes に設定して Delayed recon により各エコーの画像を再構成するアイデアで対処します。この処理は ExamCard に組み込み、手間をかけず自動化することが可能です。
本来は別に撮像する必要があった SWIp と MRA を同時に得られる SWALLOW は、撮像時間の追加というハードルが無く、初回検査やスクリーニングでも撮像しておくことが有用です。
* SWIp はオプションソフトです。
九州ブロック代表
佐賀 雅憲 先生
大分大学医学部附属病院
一般的な頭部造影撮像においては T1 強調画像が用いられることが多いですが、髄膜炎のように FLAIR 画像が診断に有用となるケースもあります。特徴として、造影後 T1 強調画像では、ガドリニウム造影剤(以下:Gd)による強い濃染が描出されますが、正常硬膜や動静脈も高信号となります。一方で造影後 FLAIR 画像は淡い造影領域を描出することが可能ですが、T2 が強調されるため浮腫も高信号となります。浮腫を伴う造影病変においてはこれらを両方撮像することが望まれる場合もありますが、撮像時間や患者状態の観点から追加撮像が困難な場合があります。この問題を解決するため、造影後 T1 強調画像と造影後 FLAIR 画像の両方の特徴を併せ持った FLAIR 併用プロトン密度強調画像 ”PANDORA” を考案されました。
ポイントとして、FLAIR 法特有の造影原理と TE の短さがあげられます。通常の FLAIR 画像では、濃い Gd は位相分散により低信号となりますが、薄い Gd は Null Point が短縮することで高信号となります。これらを踏まえ、TE を短縮することで Gd による位相分散の影響を低減でき、高濃度 Gd の描出が改善されます。また、T2 コントラストが弱くなるため、浮腫の信号が抑制されます。さらに、高速化とブラーリング改善、モーション対策の目的から k-space の充填方法として asymmetric を使用し、echo space や実効TEを短縮した状態で TSE factor を増加させることが可能となります。この際、Duty cycle の短縮による SAR の上昇を防ぐため Refocusing Control は constant の 70° に設定し、k-space 中心に不安定な信号が入ることを回避するために startup echo を 3 に設定することも工夫点です。
PANDORA は放射線治療計画での画像支援や外科手術での周囲浸潤評価、救急現場での造影後評価や術後再発に対する早期発見など、様々な臨床的有用性が期待される撮像技術です。
推薦枠:関西ブロック
森田 佳明 先生
国立循環器病研究センター
心筋の遅延造影検査(LGE:Late Gadolinium Enhancement)では、Look-Locker 法を用いて正常心筋の信号が Null となるインバージョンタイム(TI)を確認し、本スキャンに設定する必要があります。TI の設定が難しい患者に対しては、PSIR(Phase-Sensitive Inversion Recovery)も広く利用されています。近年の研究では、PSIR において左室内の信号を Null にすることで、心筋内膜と内腔のコントラストを向上させる手法が報告されています。また、敢えて長い TI を設定することで血栓のコントラストも向上させるなど、正常心筋を Null にする TI 以外の情報も診断に有効であることが示されています。しかし、従来は複数の異なる TI 画像を別で撮像する必要があり、時間を要していました。
そこで、森田先生は PSIR と Look-Locker を組み合わせ、1 回の撮像でマルチコントラストを取得可能なシーケンスを考案されました。本シーケンスは、元々の Look-Locker に PSIR を設定し、TI 検索を目的とした Look-Locker ほどの時間分解能を必要としないことから Fast imaging mode を TFE に変更しています。その結果、CS-SENSE や脂肪抑制を併用しながら、1 回の息止めで複数スライスを撮像可能な実用的なシーケンスとなりました。この手法のメリットは、multi-TI の CR(Correct Real)画像が得られることで、各疾患に対して最適な TI の画像を撮像後に選別できる点です。また、得られる画像には Magnitude 画像も含まれており、通常の Look-Locker 画像としても代用でき、まさに Look-Locker と PSIR の特徴を併せ持つ万能シークエンスとなっています。
* Look-Locker は Cardiac Expert Specialist のオプションソフトです。
推薦枠:東京ブロック
伊東 大輝 先生
慶應義塾大学病院
3D T2強調TSE法においてはフローボイドの影響で高速流(血流等)だけでなく低速流(脳脊髄液や胆管など)でも低信号になることがあります。Volume T2-weighted-imaging with Centric Ordered Encoding(vT2-CORE)は、このフローボイドを各部位の特徴や臨床的ニーズに合わせ自在にコントロールした 3D T2 強調 TSE 法です。Refocusing pulse の角度が低いほど TSE factor 後半のエコーではフローボイドが促進されることを考慮し、vT2-CORE ではまず k-space の profile order に low-high を用いることでフローボイドの影響を抑える設定をします。その上で、Refocusing flip angle や TSE factor、startup echo、プリパルス(DRIVE や iMSDE)などのパラメータを工夫することで、さまざまな部位に応用します。
Spine-CORE は脳脊髄液のフローボイドを効果的に抑制し、冠状断での撮像および等方ボクセル設定により短時間かつ精度の高い多段面再構成が可能です。キアリ奇形や脊髄空洞症、全脊椎撮像による側弯症術前の脊椎アライメント評価や、椎間板変性、椎間孔狭窄などに有用となります。
Brain-CORE は iMSDE を併用して 2 回の撮像を行い、1 回目は iMSDE の VENC を 0 [cm/sec] に設定してフローボイドの無い画像、2 回目は AP 方向および FH 方向の VENC を適切な値に設定してフローを低信号化した画像を取得します。1 回目の画像による形態評価と、これらのサブトラクションにより脳脊髄液の流れを可視化した機能評価を同時に行い、特に水頭症におけるモンロー孔や中脳水道の流出路の評価や、髄液漏の漏出点の描出に有効となります。
このように、vT2-CORE は簡便なパラメータ設定と高い汎用性から臨床現場で活躍できるシークエンスです。
* iMSDE は Black Blood Imaging のオプションソフトです。
北海道ブロック代表
菊田 俊 先生
JR札幌病院
東北ブロック代表
根本 整 先生
東北大学病院
東関東ブロック代表
斉藤 凌 先生
獨協医科大学埼玉医療センター
東京ブロック代表
小平 和男 先生
東京女子医科大学病院
西関東ブロック代表
佐藤 雷人 先生
聖隷三方原病院
中部ブロック代表
寺林 諒 先生
三重県立総合医療センター
関西ブロック代表
愛甲 太洋 先生
京都中部総合医療センター
中四国ブロック代表
藤本 崇 先生
広島市立北部医療センター
安佐市民病院
九州ブロック代表
佐賀 雅憲 先生
大分大学医学部附属病院
推薦枠:東関東ブロック
中西 一成 先生
千葉大学医学部附属病院
推薦枠:東京ブロック
伊東 大輝 先生
慶應義塾大学病院
推薦枠:関西ブロック
森田 佳明 先生
国立循環器病研究センター
特別審査委員長
高原 太郎 先生(東海大学工学部 医用生体工学科)
大浦 大輔 先生(小樽市立病院 医療技術部 放射線室)
坂井 上之 先生(つくば国際大学 医療保健学部 診療放射線学科)
立石 敏樹 先生(福井大学医学部附属病院 放射線部)
横田 元 先生(千葉大学大学院医学研究院 画像診断・放射線腫瘍学)
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