2016 年 9 月 9 日、埼玉県さいたま市のイオンシネマ大宮にて開催され、過去最高の 400 名の先生方にご参加いただきました。
演題登録数も過去最高の 50 エントリーを記録し、その中から選抜された各ブロックの 10 名の代表者と、2 名の推薦枠における計 12 名のファイナリストの先生方により、アイディア溢れるテクニックが発表されました。
中四国ブロック
木田 勝博 先生
岡山赤十字病院
MRCP の検査では呼吸同期を併用した 3D TSE シーケンスを撮像します。この撮像方法は呼吸同期を併用しているために検査時間が長くなります。呼吸状態が安定しない患者様においては、動きの影響により画質の劣化が顕著となります。その際は 2D の Heavy-T2W を息止めで撮像しますが、角度により観察し辛いことがあります。また、従来の方法では TE を 600ms 前後に設定しているため、濃縮胆汁の場合には低信号となり描出する事が出来ませんでした。このような場合には balanced シーケンスを用いて検査を行いますが、胆道系のみではなく血管も高信号となり、観察領域が重なり評価が困難となります。そこで木田先生は、これらの欠点を解決するために GRASE を用いた息止めで撮像できる 3D MRCP を考案されました。
GRASE は TSE と EPI を組み合わせて撮像する方法で、撮像時間を短縮させることが可能です。今までの撮像では呼吸同期を用いて約 5 分を要していましたが、19 秒の呼吸停止下での撮像を実現できます。放射線科の先生からは呼吸同期の画像と息止め 3D-GRASE の画像を比較しても、両者同等の画質が得られていると評価されていました。さらに、設定 TE は約 100ms となるため T2 値の長い胆道系・膵管は描出され、濃縮胆汁の場合も long TE を用いていないので描出する事が可能です。この撮像方法は高磁場装置のみではなく、岡山赤十字病院で今も現役で運用されている Gyroscan Intera 1.0T でも撮像可能であり、どのような装置・リリースにおいても設定できる新しい撮像方法です。
東京ブロック
福澤 圭 先生
虎の門病院
肝臓 EOB 検査では動きのアーチファクトのない画像が求められます。福澤先生はこれまでに多数の肝臓 EOB 検査を経験する中で、診断上最も重要な肝細胞造影相において確実な呼吸停止が困難な患者がいた場合に、分解能を下げて息止め時間を短縮する方法や、時間がかかる割には失敗の多い呼吸同期法を用いることは、診断能や検査時間の面で問題点が多いと感じてきました。そこで考案されたのが、肝細胞造影相において、空間分解能を低下させずに撮像時間だけを短縮させ、なおかつ全肝をカバーして撮像する新たな息止めテクニックであり、TRAck Navigator and Overlap Multi stack acquisitiON から “TORANOMON” と命名しました。 この手法は、息止め時間を短くするために撮像枚数を半分に減らします。撮像時間は 1/2 になりますが、撮像範囲も 1/2 になり全肝をカバーすることができません。そこで、2 スタックに設定し 2 回の息止めで撮像するように設定します。この場合、2 分割で撮像するため位置ズレや境界部分の連続性が問題となります。その位置ズレの問題を Navigator echo の Track 機能で横隔膜の位置を補正することで解決し、連続性に関しても、Overlap した 2 回の息止めで撮像された各データを MobiView によって 1 つのシリーズに合成し解決しました。この処理は ExamCard に組み込むことが可能なため、撮像後すぐに画像を確認することができます。肝細胞造影相以外にも非造影 MRA などにも応用できます。
従来、空間分解能を落とさずに息止め時間を短くするには必ずトレードオフが伴ってきましたが、この手法はその問題を解決する新しい撮像テクニックです。
北海道ブロック
大浦 大輔 先生
小樽市立病院
体幹部、四肢 MRA 撮像は血管描出能向上のために脂肪抑制を必要とします。しかし、広範囲を撮像するために脂肪抑制不良を生じ血管描出能を低下させます。特に 3.0T では balanced シーケンスによる banding アーチファクトの影響や広範囲の脂肪抑制不良に苦慮します。また、広範囲の撮像では撮像枚数の増加により撮像時間がしばしば長くなります。
大浦先生は、この問題を解決するために新たなシーケンス考案されました。シーケンスは Philips タブの中の Liver から Survey を利用します。高い飽和効果を得るために TR を shortest、FA を 20°〜30° に設定し、高い強い inflow 効果得るために TE を shortest に設定します。特に、3.0T では T1 値延長によるメリットで強い inflow 効果を得ることができます。心電図同期を利用し、呼吸同期は不要です。さらに、撮像は 2D 撮像となるため 3D 撮像に比べて動きにも強い撮像方法になります。この手法により、体幹部、四肢 MRA 撮像は simple かつ短時間撮像を可能としました。この方法を利用することにより Aortic arch を息止めなく約 13 秒での撮像を可能としました。また、下肢 MRA では 1station を約 1 分で撮像することができ、従来法に比べ撮像時間を大幅に短縮することが可能です。
九州ブロック
中浦 猛 先生
熊本大学大学院生命科学研究部画像診断解析学
3T MRI の最大の利点は SNR の向上ですが、Steady State 系の balanced シーケンスでは、1.5T と比較した場合、どうしても磁化率アーチファクトの増加や SAR の上昇に起因した制限により、バンディングアーチファクトが増加します。1.5T では非造影の MRA を撮像する際は、balanced シーケンスを用いることで高速に安定して撮像することが可能でした。しかし、3T にそのまま balanced シーケンスを用いると TR/TE の延長に伴いバンディングやモーションアーチファクトが増加し安定して撮像することができません。また 3T の非造影 MRA に多く用いられる TFE シーケンスでは、1.5T の画像と比較してコントラストや撮像時間の観点から、3T の恩恵を感じることができません。そこで中浦先生は 3T における非造影 MRA の最適なシーケンスを考案されました。
Multi-shot EPI シーケンスである TFEPI は超高速撮像として 20 年以上前から非造影 MRA への応用が期待されていましたが、アーチファクトや SNR の観点から今まで積極的に用いられて来ませんでした。中浦先生は 3T により SNR が向上し、最新の装置ではグラディエントの制御が向上したことから TFEPI を 3T の非造影 MRA に適応できないか検討したところ、T2prep pulse を TFEPI に用いることで、高速かつ高コントラストな画像を取得することができました。この高速撮像法は大動脈や腎動脈、子宮動脈などあらゆる部位の血管描出に適応できましたが、特に Whole Heart Coronary MRA では 26 秒の 1 回息止めで撮像することを実現しました。
TFEPI-MRA は、3T における非造影 MRA の問題点を解決し、さらに高速化まで可能とした新しい撮像シーケンスです。
北海道ブロック代表
大浦 大輔 先生(北海道/小樽市立病院)
東北ブロック代表
立石 敏樹 先生(山形県/国立病院機構山形病院)
北関東ブロック代表
千代岡 直家 先生(埼玉県/川口市立医療センター)
東京ブロック代表
福澤 圭 先生(東京都/虎ノ門病院)
神奈川ブロック代表
渋川 周平 先生(神奈川県/東海大学医学部付属病院)
中部ブロック代表
増元 光 先生(愛知県/藤田保健衛生大学病院)
京滋・北陸ブロック代表
中村 泰典 先生(京都府/京都府立医科大学附属病院)
関西ブロック代表
高津 安男 先生(大阪府/大阪赤十字病院)
中四国ブロック代表
木田 勝博 先生(岡山県 /岡山赤十字病院)
九州ブロック代表
中浦 猛 先生(熊本県/熊本大学)
推薦枠
岩本 勝一 先生(北海道/函館脳神経外科病院)
推薦枠
和田 達弘 先生(福岡県/九州大学病院)
特別審査委員長
曽我 茂義 先生(防衛医科大学校 放射線医学部 医学教育部医学科)
青山 信和 先生(琉球大学医学部附属病院 放射線部)
高原 太郎 先生(東海大学 工学部医用生体工学科)
田渕 隆 先生(倉敷中央病院 医療技術部門)
丹治 一 先生(北福島医療センター 放射線技術科)
土橋 俊男 先生(日本医科大学付属病院 放射線科)
室 伊三男 先生(東海大学医学部付属八王子病院 放射線技術科)
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