2014 年 9 月 19 日、京都府京都市のウエスティン都ホテル京都にて開催されました。
36 演題のエントリーから選抜された各ブロックの 10 名の代表者と、2 名の推薦枠における計 12 名のファイナリストの先生方により、アイディア溢れるテクニックが発表されました。
東京ブロック代表
吉田 学誉 先生
東京警察病院
一般的に PSIR シーケンスは、造影剤を使用した心筋の遅延造影検査に広く用いられます。PSIR は心電同期を併用した IR-T1TFE にてデータを取得し、2 つの Modulus 画像から画像再構成にて、Correct Real(CR)画像を作成します。また血管病変を描出する MRA の手法には、血管内腔を高信号に描出する “Bright Blood image” と、血管の内腔を低信号に描出し、血管壁やプラークを検出する “Black Blood image” に大別されます。従来、この 2 種類の画像は一度に撮像できませんでしたので、目的に応じて別々に異なるプロトコルを撮像していました。 吉田先生は、一度に2種類の異なる画像を取得できる PSIR に着目し、PSIR を血管描出に適応することで、一度に、“Bright Blood image” と “Black Blood image” を取得できる “Dual Contrast image” を考案されました。
まず、血管を高信号に描出することを考えた吉田先生は、高速かつ高信号・高コントラストの画像を取得できる balanced シーケンスを採用しました。PSIR のパラメータの「Contrast enhancement」を、「T1」から「balanced」に、「FA」を「90」に、そして「TI delay」は「Shortest」、「Water fat shift」を「minimum」に設定します。これにより PSIR で得られる Modulus image において “Bright Blood image” が、画像再構成で作成される CR 画像で “Black Blood image” が取得できます。これらの画像は同じデータを用いるため、位置ズレなく観察することもでき、非常に有益な撮像テクニックです。
関西ブロック
大西 宏之 先生
王子会神戸循環器クリニック
通常、3D の MRCP を撮像する際は、呼吸同期を併用した 3D-TSE シーケンスで撮像します。3D-TSE は TE も 600ms 程度と非常に長いため、背景信号が抑制され、水信号のみを高信号に描出することができます。しかし、呼吸サイクルが安定しない場合には、モーションアーチファクトが発生します。また、1 呼吸におけるデータ収集時間が長いため、呼吸サイクルの速いパターンにおいては、吸気時のデータもサンプリングされ、ブラーリングアーチファクトが発生してしまいます。さらに TE が長いことから、濃縮胆汁の際には描出することはできません。大西先生は、濃縮胆汁には呼吸同期を併用した Balanced-TFE を用いられていますが、やはり呼吸サイクルが安定しない場合には、3D-TSE と同様にモーションアーチファクトが発生しますし、balanced 特有の血管の信号も描出されてしまいます。 そこで大西先生は、呼吸サイクルに依存せず、濃縮胆汁も描出でき、背景信号も抑制できるシーケンス “Single breath hold B-TFE Inflow Suppression –MRCP” を考案されました。呼吸同期を併用した 3D-BTFE の条件を、息止めに設定するだけです。Shot interval が Shortest のため、血管の信号が抑えられ、3D-TSE のような背景信号を抑制した画像が得られます。今までの 3D-TSE MRCP の問題点を一挙に解決できるこの手法の最大の特徴は、1 回の息止め 18 秒で撮像できることです。短時間で簡便に撮像できるとても有用な撮像方法です。
推薦枠
佃 幸一郎 先生
NTT東日本札幌病院
頭部のルーチン検査で撮像されている MRA は、Inflow 効果を利用して撮像します。静脈の信号を抑制するため、頭側に Saturation pulse である REST を印加し、選択的に動脈信号のみを描出します。また、末梢血管の描出能を向上させる目的で、MTC pulse を Off resonance で印加し、脳実質の背景信号を抑制する手法もあります。しかし、MTC pulse を印加する際は、TR が延長するため、結果として撮像時間の延長を招くため、現在のルーチン検査ではあまり用いられていません。 佃先生は、血管の描出能を向上させる目的で、MTC pulse を用いずに、何とか背景信号を抑制できないか熟考されました。そして、画期的かつ簡便な手法を導き出されました。それが REST の「thickness」を、通常の「20mm」から「80mm」に変更するというシンプルなものです。REST はルーチン検査の MRA にも使用されており、「thickness」を変更しただけでは、TR の延長がないため、撮像時間の延長も生じません。実際に、20mm の厚さでは描出されなかった血管が 80mm にすることで描出されました。佃先生は、REST を厚くすることで、MTC pulse と同様の効果が得られたと考察されていました。そして、さらなる血管描出能の向上を佃先生は考えられました。それが 80mm の REST を 2 つに設定することです。これにより末梢血管の描出能がさらに改善できました。非常にシンプルでどの装置でも使用できる、とても画期的なアイディアです。
中部ブロック
水野 裕文 先生
土岐市立総合病院
近年の浅側頭動脈-中大脳動脈吻合術(STA-MCA bypass)は、小さな術創、小さな開頭範囲で手術時間の短縮が計られ、より低侵襲で手術施行する流れとなっており、術前に MCA と脳表を走行する STA との位置関係、そして脳表の情報を把握することが手術プランを立てる上で重要となっています。 その撮像方法とは、通常の Head Coil を使用せず、C4 コイルや Flex コイルなどの表面コイルを用いて撮像することです。これにより、脳表面を走行する STA は、表面コイルに近いことから MCA よりも高信号に描出されるため、奥行き方向を反映させた立体感のある画像を取得できました。同一条件を用いても Head Coil ではこの画像は取得できません。通常は CLEAR のような感度補正を用いますが、感度補正も使用しません。また MIP 時に表面の脂肪をカットすることで SAS も描出でき、まさに目的とした蛍光血管造影の画像を脳外科医に提供することができました。本手法は、STA と MCA バイパス術の術前評価に非常に有用な撮像テクニックです。
水野先生は、脳外科医から「術前に、脳表画像(SAS)と脳表を走行する動脈を描出し、STA と MCA の吻合予定部位、開頭位置、開頭範囲を決定したい」との要望を受けました。その際に、術中施行される ICG(インドシアニングリーン)を静注し、特殊なフィルタを通して見ることができる蛍光血管造影の画像を見せられ、それと同様の画像を取得することを目的とし、今回の撮像方法を考案されました。
北海道ブロック代表
川角 恵里奈 先生(北海道/北海道大学病院)
東北ブロック代表
藤村 雅彦 先生(岩手県/岩手県立中部病院)
北関東ブロック代表
新藤 雅司 先生(茨城県/筑波大学附属病院)
東京ブロック代表
吉田 学誉 先生(東京都/東京警察病院)
神奈川ブロック代表
渋川 周平 先生(神奈川県/東海大学医学部付属病院)
中部ブロック代表
水野 裕文 先生(岐阜県/土岐市立総合病院)
京滋・北陸ブロック代表
中村 昌文 先生(滋賀県/大津市民病院)
関西ブロック代表
大西 宏之 先生(兵庫県/王子会神戸循環器クリニック)
中四国ブロック代表
古牧 伸介 先生(岡山県/川崎医科大学附属川崎病院)
九州ブロック代表
馬場 隆治 先生(長崎県/佐世保中央病院)
推薦枠
佃 幸一郎 先生(北海道/NTT札幌病院)
推薦枠
山下 素幸 先生(東京都/東京逓信病院)
特別審査委員長
堀 雅敏 先生(大阪大学医学部附属病院)
川光 秀昭 先生(神戸大学医学部附属病院)
高原 太郎 先生(東海大学)
田渕 隆 先生(倉敷中央病院)
丹治 一 先生(北福島医療センター)
土井 司 先生(大阪大学医学部附属病院)
室 伊三男 先生(東海大学医学部付属八王子病院)
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