Gyro Cup 2020
Gyro Cup 2020

Gyro Cup 2020


2020 年10 月 3 日に第 6 回目となるフィリップス MRI ユーザーズミーティングの全国大会 "Gyro Cup 2020" が Web にて開催されました。初の Web 開催にもかかわらず 1,000 名以上と非常に多くの参加登録をいただきました。
全国各地で開催された各ブロック予選での熱戦を勝ち抜き、その中から選抜された各ブロックの 9 名の代表者と 3 名の推薦枠における 12 名のファイナリストの先生方により、アイディア溢れるテクニックが発表され、2020 年 "Gold Award"、"Silver Award"、"Bronze Award"、そして審査員特別賞の "Special Award" が決定いたしました。
ご参加いただいた先生方にとっても、地域を越えた多くの情報が共有され、大変有意義な会となりました。

Gold Award

大浦 大輔 先生

これから 7 分後 動いている患者の MRA 取れるようになります
- PHALCON -


北海道ブロック代表
大浦 大輔 先生
小樽市立病院

臨床現場において動く患者の MRA を撮るのは至難の業です。一般的な TOF 法を 90 秒に短縮した場合でも、モーションアーチファクトの影響で主幹動脈さえ評価できないことも多くがっかりした経験があると思います。大浦先生は撮像時間が長いイメージのある PCA 法のパラメータを考察し丁寧に組み合わせることで、いままでに無い超高速 PCA を Dynamic で繰り返し撮像、そして計算するという、Phase Contrast Angiography Loop Calculation「PHALCON」を考案されました。「PHALCON」は VENC 45cm/s と高めに設定することで極端に短い TR が実現でき、 Transverse 撮像にしたことで少ないスライス枚数に設定可能、さらに SENSE を 2 方向に入れ、超短時間化が可能となりました。しかし、Transverse 撮像は血管流入部の In-flow 効果が強く、末梢血管との信号差が目立つ画像となります。そこで、大浦先生は Tone パルスを使用する事により全体の血管信号が均一化され、末梢まで描出が良好な超短時間撮像の PCA を完成させました。
また、「PHALCON」を 3~4 回の Dynamic 撮像をし、各時相のなかで最も動きの少ない相を抽出したり、背景が暗く血管が確認しづらい Phase 画像と Magnitude 画像を足し合わせることで TOF 原画像に近い画像を作成したり、撮像後の後処理を巧みに計算させることも考案されました。これらの計算はすべてコンソールの ImageAlgebra で簡単に行うことができます。さらに、血管を低信号にして血栓を描出したり、MRAで邪魔となる血腫のみを消したり、全時相を Cumulation することで動きを平均化したり、その計算方法は多岐に渡ります。今後、動く患者のための撮像方法として期待されます。

Gyro Cup 2020 Gold Award 発表スライド 1
Gyro Cup 2020 Gold Award 発表スライド 2

Silver Award

後藤 康裕 先生

全身 5D-MRA


東京ブロック代表
後藤 康裕 先生
東京女子医科大学病院

現在非造影 MRA で使用されている 4D-PCA は、撮像時間が長く VENC の設定が難しいという問題があり、対象血管が限られてしまいます。そこで、後藤先生はだれでも簡単に撮像できる全身対応非造影 MRA、5D MRA を考案されました。
まず、Fast imaging mode を TFE から TFEPI へ変更するだけで撮像時間が 6 分から 3 分に短縮可能となりました。もうひとつの問題点である VENC 設定については、3 種類の VENC で全身どこでも対応できることに気づかれました。早い流れを描出したい場合は VENC 70cm/s、遅い流れを描出したい場合は VENC 30cm/s、 とても遅い流れを描出したい場合は VENC 10cm/s と設定します。
足趾や手指 MRA は VENC 10cm/sec を設定することで末梢まで描出することができ、拍動の有無によって動脈、静脈の分離ができます。また、この手法は血管情報のみならず位相情報も同時に取得しているため、動態評価以外に撮像後に Q-Flow 解析にて任意血管の定量評価も可能となります。
さらに 2 種類の VENC でそれぞれ撮像し、Addition や Subtraction することで流速を自在に強調した 5D-VENC Fusion 流速強調 MRA も考案されました。脳動静脈奇形では、流出静脈は VENC 30cm/sec、流入動脈を VENC 70cm/sec で描出し、それらを Addition することで血流の全体像を把握できます。さらに Subtraction することで早い流れを強調したり、遅い流れを強調することもでき、困難だった血流動態を一つの画像で同定できる、全く新しい MRA として臨床応用が期待されます。
(注:Retrospective EPI のオプションソフトが必要です)

Gyro Cup 2020 Silver Award 発表スライド 1
Gyro Cup 2020 Silver Award 発表スライド 2

Bronze Award

立川 圭彦 先生

Multi Constrast Blood Imaging Rainbow ”BRIDGE”


九州ブロック代表
立川 圭彦 先生
唐津赤十字病院

大動脈弓部周囲の不安定プラークは脳梗塞の危険因子であるという報告があります。また、CAS における術中の虚血性合併症の原因として、胸部大動脈周囲のプラークも大きな要因となります。従来の胸部大動脈の撮像法は、MRA と Vessel Wall Imaging(VWI)で 2 回以上撮像が必要で、比較的長い撮像時間が必要でした。そこで立川先生は、Pre Pulse を併用した 3D TFEPI の Multi Shot を使用し一回の撮像で MRA と VWI を得る撮像法を考案されました。
BRIDGE(BRIght and Dark blood images with multi-shot Gradient echo Echo planar imaging)と名付けられた本法は、Pre Pulse に T2 prep と IR Pulse を利用し、各時相で共有することにより Bright/Gray/Black のマルチコントラストの画像が取得可能です。具体的には、PPU の Trigger 後に、T2 prep で筋肉信号を抑制し、続いての IR パルスからの T1 回復の過程を複数時相の TFEPI でリードアウトして、マルチコントラストの画像を得ます。 TFE factor により撮像する時相数を調整可能で、低心拍での撮像時間の延長を防いだり、高心拍においても時相数を確保することが可能です。
画像処理は、任意の時相データで MIP や MPR が可能です。
Gray Blood の MPR は血管内腔壁とプラークの境界が分かり易いと医師からも評価を得ているそうです。任意の時相を Image Algebra で足し合わせて MIP を作ることで、MRA に不安定プラークを強調した立体画像を作成できます。経食道心エコー(TEE)で評価できなかった弓部のプラークの描出で、大動脈原性脳塞栓症の診断に繋がった症例や、CAS の穿刺部位の判断に有用であった症例を示されました。
(注:Coronary Acquisition のオプションソフトが必要です)

Gyro Cup 2020 Bronze Award 発表スライド 1
Gyro Cup 2020 Bronze Award 発表スライド 2

Special Award

黒崎 貴雅 先生

3D TOF-MRA


推薦枠(中四国ブロック)
黒崎 貴雅 先生
岡山赤十字病院

頭部 MRI 検査の MRA 撮像は、撮像時間が長く、体動によって画質低下を生じることがしばしばあります。声掛け、強固な固定、高速撮像と順次対応しても、無念にも MRA 撮像を中止した経験が多くあります。そこで黒崎先生は、「なんとしても診断に役立つ画像を」という強い思いから生まれた撮像法を考案されました。
本手法は、頭部 MRA をわずか 19 秒で撮像することができ、「秒撮 MRA」と名付けられました。設定する分解能は 1.2mm ISOvoxel、周波数アーチファクトとボケ改善のために Partial echo を No に設定します。撮像時間短縮のために Chunk を 1 に、TR を Shortest に設定します。この条件下で末梢血管の描出能を担保するために、FA=14°、Tone パルスの Start angle=10° に設定します。脂肪信号を抑えるために FOV は小さく、OverSampling を設定、また WFS を大きくするために PNSmode を high, Gradient mode を enhanced、Phase=AP に設定します。最後に C-SENE を 7.0 倍速に設定することで、わずか 19 秒での高速頭部 MRA が撮像可能となります。
さらにこの秒撮 MRA から条件を少し変更するだけで、7.0T にも負けない穿通枝描出が可能な超高分解能 MRA にアレンジすることができます。これは「特撮 MRA」と名付けられました。設定の空間分解能を 0.6mm ISOvoxel に変更、Oversampling と Sliceoversampling、C-SENSE をそれぞれ 1.0 に変更、denoise は Storong、TE を shortest、 WFS を 1.8、そして Tone の Start angle を 3 に変更します。秒撮 MRA と併せて、今後の臨床応用に大きな期待が持てる撮像法です。

Gyro Cup 2020 Special Award 発表スライド 1
Gyro Cup 2020 Special Award 発表スライド 2

Gyro Cup 2020 ファイナリスト

北海道ブロック代表
大浦 大輔 先生 (北海道/小樽市立病院)

東北ブロック代表
八巻 智也 先生 (福島県/北福島医療センター)

東関東ブロック代表
村山 大知 先生 (千葉県/東千葉メディカルセンター)

東京ブロック代表
後藤 康裕 先生 (東京都/東京女子医科大学病院)

西関東ブロック代表
白田 研誠 先生 (静岡県/静岡県立静岡がんセンター)

中部ブロック代表
郡 倫一 先生 (愛知県/小牧市民病院)

関西ブロック代表
重永 裕 先生 (兵庫県/兵庫県立がんセンター)

中四国ブロック代表
古牧 伸介 先生 (岡山県/川崎医科大学総合医療センター)

九州ブロック代表
立川 圭彦 先生 (佐賀県/唐津赤十字病院)

推薦枠
中西 光広 先生 (北海道/札幌医科大学附属病院)

推薦枠
黒崎 貴雅 先生 (岡山県/岡山赤十字病院)

推薦枠
井下田 栄吉 先生(福岡県/飯塚病院)

Gyro Cup 2020 特別審査員 (50音順)

特別審査委員長
鹿戸 将史 先生 (山形県/山形大学医学部放射線医学講座)

木田 勝博 先生 (岡山県/岡山赤十字病院)

関根 鉄朗 先生 (神奈川県/日本医科大学武蔵小杉病院)

高原 太郎 先生 (神奈川県/東海大学 工学部)

森田 康祐 先生 (熊本県/熊本大学病院)

吉田 学誉 先生 (東京都/東京警察病院)

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