2010 年 10 月 1 日、第1回目となる Gyro Cup 2010 が茨城県つくば市 筑波ホテルグランド東雲にて開催されました。
26 演題のエントリーから選抜された各ブロックの 10 名の代表者と、2 名の推薦枠における計 12 名のファイナリストの先生方により、アイディア溢れるテクニックが発表されました。
東京ブロック
米山 正己 先生
メディカルサテライト八重洲クリニック
balanced シーケンスに脂肪抑制を追加しようと考えた場合、周波数選択型の SPIR や SPAIR、または水選択励起型の ProSet を用いますが、米山先生のアイディアは、これらの脂肪抑制法を使用しない全く新しい考え方でした。
それは、「Postproc」の中にある「Images」というパラメータで「R」を選択するだけで可能となります。従来の脂肪抑制法では、SPIR は k-space 充填が Low-High の設定となり、定常状態移行期の信号となりますので、フローアーチファクトが増えコントラストも低下します。ProSet では k-space 充填が Linear の設定となり、定常状態の信号となりますので、フローアーチファクトは低減しコントラストも向上しますが、TE が延長するため磁化率アーチファクトが増加します。ProSet ではスライス厚にも制限があります。
例えば、非造影の腎動脈では、広範囲の場合は 20 秒の息止めを 3 回で撮像していたのが、bFFE-R を用いることで 14 秒の息止めを 2 回で撮像することができます。また、非造影 MRA 以外にも整形領域においても軟骨イメージングを目的に撮像することも可能ですし、子宮内膜症性嚢胞における脂肪の存在診断を目的とした場合においても、bFFE-R を用いることで 1 スライス 1 秒で撮像できるためルーチン検査に簡便に追加することができます。このように、bFFE-R はさまざまな領域で使用することができます。
実際の臨床現場で苦慮された中から考案された、研究用ソフトウェアがなくても、最新リリースでなくても、汎用機でできる全く新しい考え方の脂肪抑制法です。
中部ブロック
梶田 公博 先生
岐阜大学医学部附属病院
腹部検査における Gd-EOB-DTPA は、Gd-DTPA と比較して投与量が 1/4 程度(濃度および許容注入量がそれぞれ 1/2)です。そのため高い R1 値を有しながらも、肝動脈優位相において濃染強度の不安が指摘されています。非常に少ない投与量の中で、強い濃染を示す造影ピークを確実に捉え、コントラストを決定する k-space 中心に造影ピークを充填することは必須となります。今までも造影ピークを捉えるための注入方法や撮像方法に関する報告は数多くありましたが、今回、梶田先生がご提案された方法は、固定概念に囚われないユニークなアイディアでした。
そこで梶田先生は、ダイナミック撮像時において起動するアプリケーションの IViewBold に着目し、BolusTrak に適応することを考えられました。IViewBold とは、従来 functional MRI(f-MRI)を撮像する際に使用するアプリケーションです。f-MRI はダイナミック撮像をしながら、タスクの有無による Bold 効果の変化を観察します。この IViewBold では、Bold 効果をダイナミック撮像中において、Time Intensity Curve(TIC)をリアルタイムに描画することを可能とします。
この IViewBold を用いて造影剤を注入し、BolusTrak を観察することで、造影剤が到達してから造影ピークが来るまでを TIC で観察することができます。これにより、造影剤が大動脈に到達してから撮像を開始するのではなく、造影剤のピークが大動脈に到達してから撮像を開始することができるようになりました。術者や被検者に依存せず、確実に肝動脈優位相において、造影ピークを捉えることができるようなったとのことです。岐阜大学医学附属病院の肝臓 MRI に対する高い意識から生まれたアイディアです。
九州ブロック
片平 和博 先生
熊本中央病院
脊椎 MRI 検査において任意断面の再構成が可能な 3D の Isotropic で撮像することができる VISTA をルーチン検査に追加することで、このような見逃しが皆無になり、さらに読影がかなり楽になったとのことです。放射線科医の立場から VISTA の臨床的有用性について、さらには詳細なパラメータまで幅広くご紹介していただきました。
VISTA は FOV270mm の 1mm Isotropic で 140 枚(約 7cm)の撮像範囲を冠状断にて撮像します。2D 撮像の水平断では連続性がなく限られた範囲のみになってしまいますが、VISTA では水平断の連続 1mm 厚にて画像再構成することで、側方ヘルニアなどの見逃しやすい病変を回避できます。
VISTA の撮像時間は 4 分強ですので、その間だけ我慢していただければ、画像再構成により必要な情報をほぼ得ることができます。さらに VISTA は Echo Spacing が短いことから動きの影響に関しても比較的強いシーケンスです。
VISTA には多くの臨床的メリットがありますが、特に後側方および側方狭窄の評価には有用性が高いとのことです。そして撮像時の見落としによる再撮像もなくなり質の高い検査を可能とします。また VISTA が使用できない装置でも可能な “なんちゃって VISTA” もご紹介していただきました。パラメータを調整することで、ルーチンに組み込める時間までに撮像時間を短縮することができます。
北海道ブロック代表
中西 光広 先生(北海道/北海道大学病院)
東北ブロック代表
伊藤 由紀子 先生(山形県/山形大学医学部附属病院)
北関東ブロック代表
茂木 俊一 先生(群馬県/黒沢病院附属ヘルスパーククリニック)
東京ブロック代表
米山 正己 先生(東京都/八重洲クリニック)
神奈川ブロック代表
黒岩 健裕 先生(神奈川県/海老名総合病院)
中部ブロック代表
梶田 公博 先生(岐阜県/岐阜大学医学部附属病院)
京滋・北陸ブロック代表
金澤 裕樹 先生(京都府/京都第一赤十字病院)
関西ブロック代表
高津 安男 先生(大阪府/大阪赤十字病院)
中四国ブロック代表
田村 隆行 先生(広島県/広島原爆障害対策協議会 健康管理・増進センター)
九州ブロック代表
片平 和博 先生(熊本県/熊本中央病院)
推薦枠
松本 浩史 先生(千葉県/新東京病院)
推薦枠
梶谷 俊孝 先生(大阪府/明石医療センター)
川光 秀昭 先生(神戸大学医学部附属病院)
高原 太郎 先生(東海大学)
田渕 隆 先生(倉敷中央病院)
丹治 一 先生(北福島医療センター)
那須 克宏 先生(筑波大学医学部附属病院)
室 伊三男 先生(東海大学医学部付属八王子病院)
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