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AEDが必要となるのはどんな人? なぜ、医療機器であるAEDを一般市民が使っていいの? 心臓血管外科医師でフィリップスに所属する植野剛が、日常に潜む健康面でのリスクとAEDのメカニズムを解説します。

安心・安全を届けて20年。フィリップスの赤いAED

日本の街のあちこちで目にする、ハートが描かれた赤いケースのフィリップスAED。世界では1996年から販売されて、250万台以上が供給されています。日本では2004年から販売がスタートし、今年(2024年)で20年を迎えました。日本には累計55万台以上が供給され、駅やショッピングセンター、学校など公共の場やオフィスなどで皆さんの安心・安全を守りつづけています。

世界で利用されている AED

「フィリップスは130年以上にわたり、画期的なイノベーションを次々と生み出し、人々の生活を向上させてきました。現在は、世界中に医療機器・サービスを届けるヘルステック企業に進化しています。私たちが目指すゴールは、人々の幸福と健康を向上させること。それは病気や不調を抱える人はもちろん、健康な人も含まれます。突然の心停止は、それまで健康に過ごしていた人や若い人であっても起こる可能性があり、日本では1日約250人*¹もの人が心原性心肺機能停止で救急搬送されています。突然の心停止に陥った際、早い段階で心肺蘇生とAEDの使用を含む一次救命処置を実施できていれば、この命を救える確率が高まります。そのため、フィリップスでは多くの人が集まる公共の場所などにAEDを普及させる取り組みを20年にわたり推進してきたのです」

 

除細動器はもともと医師や救急救命士など特定職種の人しか使えない医療機器で、一般市民でも使用ができる除細動器としてAEDは2004年に日本で一般市民向けに承認されました。そして、日本で最初に公共の場に多く置かれるようになったのが、フィリップスのAEDでした。こうした経緯から〈誰もが使いやすい医療機器〉としてフィリップスのAEDは進化してきたのです。

 

「フィリップスがカバーする医療は、大きく分けて3領域があります。一つは、高度画像診断機器や超音波機器による〈診断・治療〉、もう一つは生体モニターやシステム、除細動器などの〈モニタリング・コネクテッドケア〉、3つめは個人に向けた〈パーソナルヘルスケア〉です。AEDは〈モニタリング・コネクテッドケア〉に位置し、医療機関から公共の場、個人宅に至るまで広くカバーしている医療機器なのです」

脳のダメージを最小限にする3分以内の心肺蘇生を目指したい

日本の救急事情を見ると、心停止の発生は〈住宅〉が約7割という実状があります*¹。

 

「私たちのさらなるミッションは、住宅エリアにもAEDの適正配置を進めていくことです。AEDによる電気的除細動の適応の一つである心室細動という不整脈が原因の心停止の場合、電気的除細動が1分遅れるごとに救急搬送先の病院を生きて退院できる確率は7~10%ずつ下がる*²といわれており、できるだけ早くAEDによる除細動を行うことが重要です。そのため、救命には5分以内の心肺蘇生が重要です。心停止で血流が途絶えたときに、最も早くダメージを受ける臓器が脳です。心臓が止まると10秒あまりで意識が無くなり、その状態が3~5分続くと、その後仮に自己心拍が再開しても脳障害(蘇生後脳症)が残ってしまう可能性が高まります。これらのことを踏まえると、心停止後の救命率や社会復帰率を高めるためには、平均10.3分*¹を要する救急隊の到着を待たずに、心停止からできる限り3~5分以内、もちろん1分1秒でも早く、その場に居合わせた一般の方が心肺蘇生とAEDの使用を含む一次救命処置を実施するのが望ましいのです」

皆さんのお住まいの近くには、すぐに取りに行けるAEDはあるでしょうか?

2023年にフィリップスが実施したAED調査によると、自宅から往復3分以内にAEDがある人はわずか13%にとどまりました。また、68%の人が「5分以内にAEDを取りに行けない」と回答しています(下図)。多くの住宅エリアでは、AEDに迅速にアクセスすることが難しい現実が浮き彫りとなったのです。

自宅から最寄りAEDまでの往復時間 image

生活習慣病も急性の心疾患のリスク要因となる

住宅エリアのAEDアクセス問題を解決していくために、フィリップスでは使いやすく管理も楽で、住居に設置しやすい家庭用AEDを2021年から販売スタートしました。心停止は健康に過ごしている人にも起こりうるものですが、まず急がれるのはリスクが高い人にくまなく行き渡るようにすることです。家庭用AED設置検討の対象となる循環器疾患(心疾患)リスクが高い人たちは、下図のとおりです。青色のグラデーションが濃くなるほど、家庭用AEDの備えが望ましい層になります。

家庭用AEDの対象となる市民・患者層 image

この図で③「心疾患を有する患者」以降は、心臓リスクが高くなるのは理解できますが、気になるのは、②「心疾患のリスクを有する市民〜患者」です。具体的にどういう方が該当するのでしょうか。

 

「心疾患を発症する前段階として、高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病を抱えていたり、喫煙や多量飲酒、運動不足、肥満といった生活習慣に問題があることがあります。こうした方は健康な人と比較して、急性の心疾患を起こすリスクが高くなります。もともと生活習慣病がある方や、生活習慣に問題を抱えている人は〈AEDが必要となるリスクが高い〉と自覚されることが大切なのです」

 

たしかに、冬場の入浴やサウナなど急激な温度変化で起こるヒートショックでも、65歳以上、心疾患、生活習慣病や睡眠時無呼吸症候群、喫煙習慣などがある人が、リスクが高いとされています。「自分には起きない」と思い込んでいる人でも、健康状態やその日の体調、あるいは生活環境でリスクが高まると理解することが大切なのですね。

生活習慣病が与える影響と心停止 image

救助する人、救助される人にやさしいAED

まさかに備えて、家の近くにあるAEDを探して「どれだけ時間がかかるか」「深夜や休日でも使えるか」をまずは確認してみることが、命を守る安心につながりますね。その次に気になるのが、AEDが必要になったときに「自分や家族が使えるかどうか」という問題です。

 

AEDは誰もが使えるように設計された医療機器ですが、『使うのが怖い』という方も少なくありません。さらに、人が倒れるという緊急事態で、気が動転して思うように動けない状態になることも考えられます。

 

フィリップスでは、そうした事態も想定して、徹底したユーザーテストを繰り返し、ボタンのデザインから配置、パッド位置を示す人体イラストに至るまで、誰もが直感的に使いこなせるAEDのデザインを追求しています。AEDを現場に持ってきたら、ケースを開けて起動ボタンを押す。あとは音声ガイダンスが教えてくれるとおりに操作をすることで、パッドの貼りつけから電気ショックまで、誰もが正しく行えるように設計されています。

 

電気ショックボタンを押すときは、「本当に押していいのだろうか」と不安になることはないのでしょうか。

 

「それも心配におよびません。なぜなら、パッドを貼ると、自動的に心電図の解析が始まり、AED自体が〈ショックが必要かどうか〉を診断してくれるのです。ちょっと専門的になりますが、フィリップスのAEDは心拍数・振幅・伝導性・安定性という4指標の〈スマートアナリシス〉というテクノロジーで、ショック適否を判定します。つまり、ショックの有無は、救助する人ではなくAEDが専門的に判断するのです」

 

ショックについても、心筋へのダメージに配慮した低エネルギー設計となっています。フィリップスのAEDは現在では主流になっている電流が2方向に流れる二相性波形のテクノロジーをAEDに最初に取り入れ、より高いショック成功率を目指して検証を重ねた結果、150Jの二相性波形が最適であると判断しAEDに導入されました。つまり、心臓にやさしい低エネルギーでありながら、より効果の高いショックが実施できるのが、大きなメリットなのです。また、未就学児に対しては未就学児用パッドを使用することで、お子さんにも安心して使うことができます。

 

フィリップスのAEDは、救助する人と救助される人の双方にやさしいテクノロジーで、より正確かつ安全性を追求したAEDなのですね。

 

「最新の家庭用AEDでは、ご家庭での使いやすさを追求し、オプションのトレーニング用パッドでAEDを使うトレーニングができる設計にしています。また、セルフメンテナンス機能があり、故障やトラブルがあるときは、AEDが音とランプで知らせてくれるので、一般のご家庭でも安心して常備しておくことができます。見た目のデザインもおしゃれなので、お守りとして、また相手への思いやりを伝える愛のメッセージとしてプレゼントするのにも最適です」

患者安全のために〈迷わない、間違わない、誰もができる〉を追求

AEDが、ここまで正確かつ安全性を追求しているのはなぜでしょうか?

 

「フィリップスでは、ヘルス・テクノロジー企業として、ペイシェント・セイフティ、すなわち〈患者安全〉を第一に掲げています。〈患者安全〉とは、患者さんの治療や診断に役立つ医療機器を提供することにとどまらず、医療現場で起こりうるヒューマンエラーやリスクをあらかじめ予測して、回避できる仕組みを製品やサービスに組み込むモノづくりの思想も含まれます。それは、一般市民も使用できるAEDにも生かされており、〈迷わない、間違わない、誰もができる〉の実現を目指したAEDは、まさにフィリップスの思想が最大限に発揮された医療機器の一つといえます。

 

患者安全に加え、医療現場に抱える課題やニーズに適確に応えていくために、医師、看護師や臨床工学技士などの医療従事者が所属し、医療現場のニーズや課題に即応した製品・サービス開発や、市場展開をおこなっています。すべては患者さんのために――人々の生活を向上させる有意義なイノベーションを生み出してきたのです」

 

ハートが描かれた赤いケースのフィリップスAEDは、安心とやさしさの象徴。ご家庭に1台あれば、多くの人の命を守ることにつながります。フィリップスでは、人と人が助け合える安心・安全のまちづくりHeart Safe Cityを推進してきました。公共の場から生活の場へ――これからもフィリップスのAEDは、あなたと大切な人の安心を守りつづけます。(取材・文 / 麻生泰子)

 

フィリップスAEDについて詳しくはこちら 

 

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*1 「令和5年版 救急・救命の現況」総務省消防庁

*2  European Resuscitation Council. Part 4: the automated external defibrillator: key link in the chain of survival. Resuscitation. 2000 Aug 23;46(1-3):73-91.

 

プロフィール

植野剛(フィリップス メディカルディレクター)

心臓血管外科医として活躍したのち、現在はフィリップスのグローバル部門で医療現場のニーズと製品・サービス開発をつなげる役割を担っています。

2008年、京都大学医学部医学科卒。

2008~2014年、倉敷中央病院にて初期研修、心臓血管外科後期研修、専門修練。

2014~2015年、兵庫県立尼崎病院にて心臓血管外科医長。

2015~2021年、病院統合・移転により兵庫県立尼崎総合医療センターにて心臓血管外科医長。

2021年、Philips の Medical Officer に就任し、2022年より現職(Medical Director)。

フィリップスではコンサルティング、ソリューション、ソフトウェア、医療機器などを通じて実効的に取り組む。またその他にも、医療制度・医療政策面からの改革を推進する 「Policy makers lab」、心臓血管外科術後の心停止に対する蘇生プロトコールの日本への導入・普及を進める「CALS Japan Working Group」 を運営する。 

医療の質や安全、持続可能性の向上を目指し、医師の本分である「医療及び保健指導を掌ることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保する」(医師法第1章第1条より抜粋)を達成すべく、日々奮闘中。

 

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