2022年の夏は観測史上最速で梅雨明けが発表されました。気象庁によれば、日本の3~5月の平均気温は100年あたり1.53℃上昇し、6〜8月の1.16℃よりも上昇割合が大きいそうです。そのため、5月でも最高気温25℃以上の夏日や、30℃以上の真夏日が記録される日が増えており、9月になっても暑さが続くことが増えています。「夏が長期化する」傾向が高まっているのです。 熱中症の予防策は、水分補給や休憩、エアコン使用などその場でできる対策に加えて、“暑さに強い体づくり”があります。暑さに強い体をつくるためには、バランスの良い食事や十分な睡眠はもちろん、身体の〈暑熱順化〉が大切です。 暑熱順化(しょねつじゅんか)とは「身体が暑さに慣れること」。人間の身体は、暑い環境にさらされると、血液循環を高め、毛細血管を広げて発汗を促すなどして体内の熱を放散させ、体温を下げる仕組みが活性化します。しかし、身体が暑さに慣れていない、汗をかく習慣がないと、血液循環や発汗が追いつかず、身体の熱が上手に放出できない状態で体内に熱がこもり、のぼせや熱中症になる危険性が高まるのです。また、高齢者も発汗量・皮膚血流量が減少し、暑さに鈍感になり、熱中症リスクが上がります。 身体の暑熱順化を高めるには、日常生活に運動や入浴を組み込み、汗をかきやすくして体熱の放出しやすい体をつくることです。そこで暑熱順化に役立つ生活習慣をいくつかご紹介していきます。
もっとも簡単に暑熱順化を高めるには、湯船に入って身体を温める入浴法が有効です。暖かくなってくるとシャワーですましてしまいがちな人もいるかもしれませんが、湯船にしっかり入ることで、発汗が高まり、新陳代謝が活発になります。血液中の疲労物質が流されて、むくみの解消、筋肉のマッサージ効果も期待できます。 思いっきり汗をかいて身も心もリフレッシュしたい!という人には、サウナもおすすめです。お風呂が休息タイムだとすると、サウナは積極的休息タイム。「温まる・冷やす・休む」を組み合わせた温冷交代浴は、心身が生まれ変わったようにリフレッシュできる効果が期待できます。 サウナブームの火付け役タナカカツキさんによると、「サウナを始めてから肩こり、腰痛、目の疲れ、倦怠感など体の不調は一切なくなりました。夜はよく眠れるし、前向き思考になるし、仕事の量と質はグッと高まりました」とのことで、サウナによって健康もメンタルも仕事も絶好調のようです。「疲労回復浴」「肥満減量浴」「全身美容浴」など目的別のサウナ入浴法もご紹介しています。
日本は、古くからお風呂大国で、約6000年前の縄文時代の遺跡に温泉を利用していた痕跡が残されており、銭湯の始まりは奈良時代という説もあります。しかも、温泉医の早坂信哉教授によると、湯船に入る人ほど「幸福度が高い」という調査結果もあるのです!
平均気温の上昇で、亜熱帯のような気候に近づいている日本列島。一方、赤道近くにあるインド南部は、暑い日には50度近くの気温に到達することもある熱帯気候です。それゆえに、インドの伝統医学アーユルヴェーダには、暑さをしのぎ、暑さから身体を守るための知恵が数多く伝わっています。 最近は、テレワークの普及や外出制限が続いたことで、家で過ごす時間が増えたという人も多いのではないでしょうか。さらに猛暑日ともなると、できるだけ外出を控える人も少なくないはず。デスクやソファでPCやスマホを見て過ごす時間が長くなると、脳や目は疲れているのに、身体は疲れていないというアンバランスな状態を引き起こします。 現代人に必要なのは「正しく疲れること」。脳が休養を必要としていても、活動量が少ない身体は休養に入るほど疲れていないと寝つきが悪くなったり、睡眠の質が下がることがあります。 ヨガの動きで、筋肉を使い、身体をほぐすと、エアコンや運動不足でこわばっていた身体の可動域が広がるとともに、心地よい疲労感が得られます。簡単にトライできる、寝たままできる“入眠スイッチ”ヨガを紹介しています。
ヨガをはじめとする伝統医学アーユルヴェーダに詳しいマニーシュ(AHTA YOGA主宰)によると、日本の夏で気をつけるべきは「屋内外の温度差」と「冷たい飲み物」だと言います。
屋内外で温度環境がガラリと変わるたびに自律神経が混乱し、体力は余計に消耗します。また、日本人は冷たい飲み物を多く飲みますが、アーユルヴェーダでは「冷たい水は身体に毒で、温かい水は神の飲み物」という教えがあり、インド人は暑い日も温かいチャイを飲むことで知られています。胃腸を温めて食欲や消化を増進させる夏バテ解消の効果があるのだそうです。
さらに、日本の食卓でおなじみの “ある伝統食”が「夏バテ防止につながるスーパーフード」だとマニーシュは教えてくれました。身体の熱を冷ます呼吸法「シータリー」もご紹介しています。
気象庁は、熱帯夜の年間日数は年々増加傾向にあるとしていますが、もはやエアコンなしで熱帯夜を過ごす行為は健康へのリスクを高めかねません。でも、エアコンで快適な夜が迎えられるかというと、必ずしもそうでもないようで、“エアコン冷え”で朝起きたとき「身体がだるい」「疲れがとれない」と感じる人も増えているようです。 気象庁ホームページ 日本気象協会ホームページ 環境省熱中症予防情報サイト
なぜ、エアコン冷えで「身体がだるい」「疲れがとれない」などの不調を感じるでしょうか? それは、エアコンの冷風で毛細血管が縮まって血液循環が悪くなることで、代謝が低下したり、疲労物質が排出されにくくなるため。つまり、寝ても身体の修復や血液の浄化が進まず、せっかくの睡眠効果も半減してしまうのです。
エアコン冷えを改善するには、エアコンをつけて寝るときは、長袖・長ズボンのパジャマで身体を冷やしすぎないようにすることが大切です。もちろん、今回ご紹介した暑熱順化の生活習慣は、“エアコン冷え”解消にも役立ちます。炎天下の暑さや、エアコンの冷気、強い紫外線、熱帯夜の寝苦しさなど、夏は身体に大きな負担をかけます。入浴、運動、食などの生活習慣の「夏シフト」で、長期化する夏を乗り切りましょう。(文/麻生泰子)
参考:
フィリップスが考える、健康な生活、予防、診断、治療、ホームケアの「一連のヘルスケアプロセス(Health Continuum)」において、皆様の日常生活に参考になる身近な情報をお届けします。一人ひとりの健康の意識を高め、より豊かなヘルスケアプロセスの実現を目指します。