ヘトヘトに疲れてお風呂に入ったら、体だけでなく心までスッキリ軽くなった経験はありませんか?
お風呂に入ってキレイになるのは、お肌だけではありません。じつは体の中でも同様のリフレッシュ効果が起こっているのです。
温泉療法専門医である早坂信哉教授(東京都市大学)によると、入浴による効果は大きく次の3つがあるといいます。
以上のように、入浴後の爽快感には、それを裏づける科学的メカニズムがあったのです。早坂教授は入浴がもたらす心身のへの効果を多角的に研究しており、その成果から「お風呂は幸福度を高める効果がある」と指摘します。
2012年、東京都市大学の研究チームが静岡県の6,000人の住民を対象に行った調査によると、「毎日お風呂に入る人」は、毎日お風呂に入らない人に比べて幸福度が10ポイント高く、さらにシャワーだけの人との比較では、「湯船に入る人」の幸福度は12ポイント高いという結果が出ました。
日本人がお風呂好きな民族なのは、この「幸福感」が最大の理由なのかもしれません。
私たちの体はたった1〜2℃体温が変わるだけで、体調が大きく変化します。お風呂も同じ。わずかな温度の違いで、体への効果が変わってきます。その境目となるのが「42℃」です。
42℃以上の熱い湯に入ると、戦闘モードをつかさどる交感神経が高ぶります。血圧は上がり、脈拍は早まり、筋肉は緊張します。一方、内臓の働きは弱まり、食欲は一時的に減退します。寝る前に熱いお風呂に入ってしまうと、神経が高ぶり、寝つきが悪くなることも。
熱めのお風呂やシャワーに入るなら、朝がおすすめ。交感神経が優位になり、眠気モードから活動モードに切り替わります。朝から体の活動性が高まることで、1日の消費カロリーが高まり、効率の良い自然なダイエット効果も期待できます。
一方、40〜41℃程度のぬるめの湯は、リラックス状態をもたらす副交感神経を優位にします。血圧は下がり、脈拍はゆっくり、内臓の働きが活性化して消化が促されます。就寝前やリラックスしたいときはぬるめのお風呂がベスト。入浴から30分〜1時間後に体温が下がるタイミングで心地よい眠気が訪れます。
ちなみに、人間の体は体温が1℃下がると、基礎代謝や免疫機能が下がり、体内酵素の働きが鈍くなり、肥満、感染症、がんなどさまざまな不調や病気を引き起こすと考えられています。
約40℃のお湯に10〜15分ほど浸かることで、体温は約1℃上昇します。寒い日や疲れた日は入浴で体温を上げておくと、体力回復や病気予防につながります。お風呂の温度を上手に使い分けることで、体のモードを切り替えたり、病気を防いだりと、さまざまな健康効果を生み出すことができるのです。
38℃以下の熱で体調がさほど悪化していなければ、40℃前後のお風呂で回復が早まる効果があります。体内温度が上がることで免疫機能が上がり、蒸気が鼻や喉の粘膜についたウイルスを弱らせ、症状を緩和します。
日本はお風呂大国。入浴の歴史は長く、約6000年前の縄文時代の遺跡に温泉を利用していた痕跡が残されています。また、奈良時代には銭湯の起源が見られ、近世には江戸を中心に銭湯が爆発的に増えました。
お風呂が各家庭に普及したことで、私たちはますますお風呂のめぐみにあずかることができるようになりました。引き継がれてきた健康習慣を大切に、これからも自分の体調に合わせて上手に活用していきたいですね。(取材・文/麻生泰子)