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6 15, 2020

〈呼吸器専門医×管理栄養士対談〉COPD患者さんが元気で長生きする秘訣

ページを読む時間の目安: 3-5 分

世界の死亡原因3位*1を占める慢性閉塞性肺疾患(COPD)。上手に付き合い、健やかな毎日を実現する食事や運動など生活の心得を、桂秀樹先生(呼吸器専門医)と田中弥生先生(管理栄養士)にうかがいました。

身体を動かすことはCOPDの万能薬

桂 COPD患者さんが元気に長生きするためにはできるだけ身体を動かすように心がけて、身体活動性を高めることが大切です。身体を動かして全身の筋肉が鍛えられることで、呼吸が楽になり、気持ちも前向きになり、生活の質も高まるなど様々な相乗効果が期待できます。身体を動かすことはCOPDの万能薬なのです。

 

田中 COPD治療において運動療法は、栄養療法と並んで重要な位置を占めていますね。

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桂 はい。気管支拡張薬で呼吸しやすくしてあげる薬物療法が基本ですが、運動療法と栄養療法は元気を取り戻すための前向きな治療の二本柱です。呼吸リハビリテーションで身体の運動能力を高めることも重要ですが、日常生活で運動習慣を身につけることが重要なのです。

 

田中 日常生活にも波及させることではじめて、身体活動性が引き上げられるのですね。

 

桂 COPD患者さんは呼吸を楽にするために無意識のうちに日常生活の身体活動レベルを下げていますから、意識して生活習慣を変えていくことも必要なのです。運動にはエネルギーが必要なため、特に体重減少をきたした患者さんでは、運動療法と栄養療法を併用することが重要です。

 

田中 栄養指導でも食生活を変えるのは大変ですが、生活習慣の改善について桂先生は患者さんにどうご指導されますか?

 

桂 私がよくおすすめするのは歩数計を使って歩数日誌をつけることです。大切なのは、目標を設定すること。「次の診察日まで10%増やしましょう」というように患者さんと一緒に目標を決めています。目標を共有できる相手がいると励みになって継続しやすいと感じています。

 

また、在宅酸素療法の患者さんには「酸素療法も大切なリハビリですよ」と、よくお話しします。酸素と一緒に活動的に過ごしていただきたいのですが、なかには在宅酸素療法を始めたことでせっかく日常生活の呼吸が楽になり、外出もしやすくなったのに、機器がわずらわしくて外出が億劫になる方もいるようです。でも、今は外出時に携帯できるコンパクトな酸素濃縮器もあり、国内宿泊施設での設置サービスなども利用できますので積極的に外出して欲しいと思っています。

以前、日本周遊クルーズに行ったのですが、船内で携帯用酸素濃縮器を使われ旅行を楽しまれている乗客の方を二人お見かけして、感激しました。酸素という心強いパートナーができたと思って、身体活動性の向上に積極的に役立ててほしいですね。

分食や食品の工夫で「おいしい!」を大切に

田中 よく身体を動かすにはよく食べることもぜひ心がけてほしいですね。体重が減少している患者さんへの栄養指導では、「美味しい!」と感じるものを食べていただくことを最優先にしています。体調や症状に合わせた栄養指導は、体重を取り戻してからですね。

 

桂 「高カロリー・高タンパク・高脂質食」は、COPD治療の基本ですね。ご飯や麺類などの炭水化物は、体内に二酸化炭素がたまってしまうと言われますが、やはり控えたほうがよいのでしょうか?

 

田中 まず重要なのは、エネルギーを補給することです。ご飯や麺類の糖質は大切なエネルギー源でもあるので、あまり気にしすぎず、食べてほしいですね。糖質不足でエネルギーが不足すると、筋肉や脂肪を分解して燃焼させるので筋肉量や体重減につながりかねません。食事の5割を炭水化物でとり、脂質は3割、たんぱく質は2割ぐらいのバランスが理想的ですね。

 

桂 バランスよく食べることが大切なのですね。一度にたくさん食べられない患者さんには、午前と午後におやつとして分食する指導をしています。ゼリーやドリンクなど喉ごしがよく、小分けされているものだと食欲がない日も、エネルギーをはじめとした栄養をしっかりとれる。最近はゼリー状の栄養補助食品で、日本人の嗜好にあったものも発売されています。手軽で、患者さんにも好評のようです。

 

田中 食事はどうしても嗜好や気分に左右されます。栄養療法を継続するうえで大切なのは「味を楽しむこと」。味のバリエーションが豊富で、日本人の嗜好に合うものだと、なおいいですね。

 

桂 最近は、糖尿病を合併しているCOPD患者さんも増えていますが、栄養指導のポイントはありますか?

 

田中 さきほど桂先生がおっしゃったような10時と15時の分食習慣はとてもいいと思います。食事の2、3時間後は血糖値が下がってきますから乳製品、パン、ナッツ、タピオカなどゆるやかに血糖が上がる低GI食品をとると、急激な血糖値上昇を防ぎつつ、エネルギーをしっかり摂取できます。

 

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楽しみをもつことが一番の治療になる

桂 COPDの予後をよくするには、呼吸リハビリテーションはもちろん、栄養療法が重要ですが、こうした療養の知識をご存じない患者さんもまだまだおられますね。体重を維持する食事の工夫や運動の必要性は、どの患者さんにもお伝えするようにしています。

 

田中 管理栄養士は体重維持の指導はもちろん、体調や症状を緩和する栄養素の提案もできますから、管理栄養士の知恵をぜひCOPDの療養に活用してほしいと思います。

 

桂 体重が減ってきているのに管理栄養士の指導を受けたことがない方は、かかりつけの先生に「栄養指導を受けてみたい」と相談してみるのもいいと思います。栄養指導は保険適用対象(注:適用には諸条件あり)になったので、患者さんの経済的負担も軽減されています。

 

田中 運動・栄養療法はすぐに効果が感じられるものではなく、地道な努力が必要です。患者さんの心がけはもちろんですがご家族、医師や看護師、管理栄養士などまわりの人が「ご飯は食べている?」「どのぐらい身体を動かしている?」などと声をかけながら並走することがとても大切だと実感しています。

 

桂 患者さんは遠慮せず、旅行や趣味などのご自分の希望、生活上の悩みを医療者に伝えてほしいですね。今は患者さんを支援するツールや情報も豊富なので、病気とうまく付き合っていく方法はさまざaまあります。

 

生活の中に少しでも楽しみが増えれば、身体を動かすことが増え、ご飯もおいしくなるはずです。COPDは自分の楽しみをもつことが、元気で長生きの秘訣につながるのです。(取材・文 / 麻生泰子)2020年4月4日発行 日本呼吸器障害者情報センター 第107号より転載

桂秀樹(かつら・ひでき)先生

東京女子医科大学八千代医療センター 呼吸器内科教授

岩手医科大学医学部卒業。専門分野は呼吸器疾患全般で、特に慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性呼吸不全、呼吸リハビリテーション。日本呼吸ケア・リハビリテーション学会理事。『COPD診断と治療のためのガイドライン2018』作成委員を務める。

 

田中弥生(たなか・やよい)先生

関東学院大学栄養学部 管理栄養学科長 教授

筑波大学大学院人間総合科学大学スポーツ医学専攻博士課程修了。地域病院や老人保健施設の栄養科長を歴任したのち、駒沢女子短期大学食物栄養科准教授、慶應義塾大学看護学部非常勤講師兼任、駒沢女子大学人間健康学部健康栄養学科教授を経て、現職。日本栄養学会理事、日本栄養士会常任理事。

 

*1 Global Health Estimates 2016: Deaths by Cause, Ages, Sex, by Country and by Region, 2000-2016. Geneva, World Health Organization; 2018.

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