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3 15, 2019

トップアスリートから学ぶ。
名古屋グランパスの健康管理力

ページを読む時間の目安: 3-5 分

名古屋グランパスでは、スポーツドクターや栄養士らがチームとなり、選手の健康管理を徹底するサポートを強化しています。選手が活躍するために必要なケアとは? 勝利に向けた独自の取り組みに迫ります。

長く第一線で活躍できるアスリートの資質とは?

アスリートが第一線で長く活躍するために、必要な心がけは何でしょうか。愛知を拠点とする名古屋グランパスでは、選手の「健康管理の重要性」に早くから着目し、サポート体制に力を入れてきました。

 

名古屋大学整形外科の深谷泰士チーフドクターが選手の健康状態をつねにチェックし、管理栄養士・スポーツ栄養士の河村美樹さんらが食事管理を徹底します。名古屋グランパスでは、選手の年齢、体調、体質に応じたきめ細かなサポートが行われているのです。

 

「若く、体に恵まれた選手だからといって油断はできません。若いと動きが粗雑だったり、体力配分ができなかったり、プロとしての体ができていないことがあります。ベテランと呼ばれる選手は、体の変化に応じて練習量や食事を調整し、変わり続けることで自分自身を磨いてきた人たち。選手の心と体をサポートしながら、選手の自己調整力を育てていくのが私たちの課題です」(深谷ドクター)

 

「例えば、42歳まで第一線で活躍し、今年(2019年)現役引退を表明した楢崎正剛選手は日常レベルで節制ができ、自身をうまくコントロールしてきた選手だったと思います。一方、クラブ入りしたばかりの若い選手は食や体に対する意識はまだ十分とはいえません。こうしたベテラン選手と食事や練習をともにすることで、学んでいく面は大きいと思います。

 

私たちも選手の体質や体調を見極め、栄養知識や食事の大切さを繰り返し伝えていきます。そうすることで、自分で意識的に食を選びとり、生活習慣をコントロールする力がついてくるのです」(河村栄養士)

管理栄養士・スポーツ栄養士の河村美樹さん

選手生命を左右する“体の不調”を見逃さない

サッカーのような激しいスポーツでは、心臓突然死などのリスクも考慮した健康管理も重要です。Jリーグでは2011年に松田直樹選手が練習中に心筋梗塞で亡くなったことを機に、全選手の年1度の心電図検査、さらに5年ごとの心エコー検査を徹底しています。また、Jリーグに関わる職員は定期的なAED講習会で心肺蘇生のノウハウを学び、練習や試合ではベンチにAEDをかならず常備しています。

 

名古屋グランパスでは、さらに年4回とシーズン前の健康診断を実施し、万全を期していると深谷ドクターは話します。

「サッカー選手は、一般の人に比べ、体脂肪が圧倒的に低く、筋力量が多い。しかも心肺機能も高く、強靭な肉体といえます。しかし、激しい運動量に適応するために、スポーツ心臓といわれる心肥大や徐脈を生じていることもあります。心肺機能への影響を留意して、できうるかぎりの検査を実施しています。

一般の方も、40歳を過ぎると、心筋梗塞や狭心症といった心疾患のリスクが高まります。予防策としては、軽めのジョギング、早歩きなどで弱い負荷をかけて心肺機能を鍛えていくこと。また、食事面では、カロリー摂取、脂質、塩分のとりすぎに注意する必要があります」

 

試合や練習においては、AEDをかたわらに深谷ドクターがベンチで見守り、終了後は、四肢運動器系を中心にメディカルチェックを行なっています。

 

「ピッチに立ちつづけるために、痛みを我慢したり、隠そうとする選手もいます。痛みを押してでも試合に挑もうとする選手の姿勢は、その選手の強さでもあります。一般的な治療ならばドクターストップをかけるような局面でも、プロスポーツにおいてはギリギリまで踏みとどまることもあります。選手の闘争心を削がず、不調の芽を的確なタイミングで摘み取り、治癒へと導いていくことがスポーツドクターには求められます」

 

選手の熱意とフィジカルの限界を考えながら、治療やアドバイスをする。そのためには、まず選手を知り尽くすことが大切です。日々のメディカルチェックは肉体面のみならず、選手の精神面を把握し、信頼関係を築いていく場でもあるのです。

チーフチームドクターの深谷泰士さん

疲労を持ち越さず、身軽に動ける体づくりの秘策とは

練習後・試合前後の食事は、河村栄養士がプロデュースしています。練習後のメディカルチェックが行われたのち、体の回復を促すフードメニューが提供されます。

 

「激しいスポーツをした後は、すぐに栄養補給することが疲労回復を早めるカギになります。例えば、よく提供するのは、おにぎりなどの炭水化物、フルーツと野菜のスムージーなど豊富なビタミンを含むもの。運動で消費したエネルギーを炭水化物ですみやかに補給し、代謝を円滑にするビタミンをとることで、翌日に疲れを残さない体をつくります」

 

試合のある日は、試合開始の3時間半〜4時間前に食事をとります。幅広いメニューを揃え、選手ごとに調整できるようビュッフェ方式で用意します。

 

「炭水化物(糖質)が消化されてエネルギーに変わるのは、食後2〜3時間後。そのタイミングを逆算して、キックオフ時には、エネルギー満タンでスタートできるように準備しています。遠征試合の場合、国内であればメニューや調理法を指定した詳細な要望書を作成し、ホテルに依頼します。海外のキャンプなどでは、現地でキッチンを借りて、日本のお米を炊き、食べ慣れた和食などのメニューを用意することもあります。とくに、夏場や暑い国での遠征試合は、暑さで消耗し、食欲も低下しがちです。体重減少はスタミナ低下に直結します。そうめんをその場でシャッシャと水切りして出したり、目の前でお肉を焼いて提供したり、食欲増進の酸味や辛味の調味料を活用するなど、食欲を増進させる工夫をしています」

 

スタミナのわかりやすいバロメーターになるのは「体重」です。

 

「身軽に走れて、スタミナ切れしない体をつくるには、ベスト体重にもっていくことが一つの指針になります。体重測定のデータと、選手のコンディションとを照らし合わせて、“一番キレよく動ける体重”を絞り込んでいきます。一般の方ならば、適正体重(身長×身長×22)から求めた体重が一つの目安になると思います。個人差はありますが、激しい運動をする人は適正体重より若干軽い方が動きやすいと感じることがあるようです。まずは適正体重を目安に、身軽に動けてスタミナが長く維持できる体重を見つけるといいと思います」

 

つねに選手に帯同し、選手の動きや表情から課題を読み取り、食事内容を考えるという河村栄養士。

 

「コンディションは日々変わりゆくものですから、その日そのときの最高の“勝てる体”をつくるために、私たちも毎日必死です。ただ、自分の体の変化は、選手自身が一番知っているはずですから、選手とよく話し合って一緒につくり上げていくことが大切ですね」

 

トップアスリートとして第一線で活躍するには、変わりゆく自分の肉体に向き合い、変化に応じた調整のすべを身につけていくことが肝要なのですね。

 

名古屋グランパスのように、チームドクターや栄養士などのメディカルチームが選手の健康管理を徹底するのは、欧州のクラブなどでは一般的だといいます。日本でも、名古屋グランパスのような取り組みをするクラブチームは増えつつあります。さらに浸透していくことで、強い日本のサッカーへと進化させる推進力になるかもしれません。(取材/文・麻生泰子)

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