声楽家は「のど」が資本かと思いますが、皆さんが心がけている“のどを守るケア”はありますか?
寺本 一番悪いのは、乾燥ですね。マスクを湿らせるのはもちろん、湿度が高い時期以外は、寝室で加湿器をフル稼働させています。乾燥すると声が枯れやすくなったり、風邪のウイルスが侵入しやすくなりますから、よく風邪を引くという人は乾燥に気をつけるだけでずいぶん変わってくるはずです。
馬場 お酒を飲んでのカラオケも、のどには最悪なんですよ。アルコールによって声帯が充血した状態で大きな声を出すと、のどが過剰に震動して炎症を起こしやすくなるのです。
世間一般では、お酒とカラオケはセットになりがちですよね。
経塚 歌うこと自体は体にとてもいいと思います。ただ、私たちは声を仕事にしているので、どうしてもストイックになりますね。極端な話、声の調子が悪いときは「話さない」ことを心がけるほど。いつまでも歌いつづけるには、日頃の小さな積み重ねが大切なんです。
沼生 でも、歌い手はおしゃべり好きが多いんです。しかも、声が大きいから、ナイショ話も全然内緒になってないこともよくあります(笑)。
ヘルスケアで気をつけていらっしゃることはありますか?
寺本 私は腹筋マシンで、朝昼晩各100回の腹筋をしています。声のため? いや、履けなくなったズボンのためですね(笑)。昔は太ったオペラ歌手は結構いましたが、最近は演出家も舞台映えを意識しますから、太りすぎないように気をつけている歌手は多いと思います。
馬場 声楽をやっていると、体型も“歌う体”に変わってきます。オペラ歌手は横隔膜を使うので、背中や胸まわりが厚くなるんです。細身の歌手でも、背中から首にかけてはガッチリしています。
竹下 ただ、留学時代は逆にやせすぎないように気をつけていました。欧米人は体が大きいので、舞台で見劣りしちゃうんですね。ただ太るのでなくマラソンや水泳で筋肉を鍛えるようにしています。
沼生 歯のケアも大切ですね。お口の環境が変わることで、声に影響が出る可能性もありますから、こまめに磨いて、チェックして、今の状態を維持することは心がけています。
お口といえば、みなさん口もとがとてもきれいですね。
経塚 歌うことは口の筋肉はもちろん、顔全体の筋肉を使うので、たるみにくいかもしれませんね。そういえば、歌い手は見た目が若い方がとても多いと思います。
「歌うこと」の健康効果は絶大です。第一に、口の筋肉を動かすアンチエイジング効果。唾液の分泌を促し、滑舌もよくしてくれます。また、なにより魅力的な顔つきは表情筋の発達によるところが大きいとされているのです。
第二に、歌うことは横隔膜を上下運動させるので、内臓の働きを高めて全身の血行をよくする効果が。極めつけは、幸せな気分を呼び起こすエンドルフィン、心を安定させるセロトニンといった脳内ホルモンの分泌も高まるメンタル効果も。
歌うこと自体が、いつまでも元気で若々しくいる最大の秘訣になっているのですね!
皆さん、欧米への留学や公演を経験されていますが、クラシックやオペラに対する文化的、身体的な差異を感じることはありますか? 音楽の力は、聴くことだけなく、歌うことでも体感できそうです。とくに「歌うこと」はアンチエイジング効果も高く、良いことづくし。日常生活でも取り入れてみたいですね。(取材/文・麻生 泰子)
経塚 私はフランスから帰国したばかりですが、劇場数こそ日本より多いものの、クラシックやオペラファンの数は、日本とそんなに変わらないと思います。
沼生 イタリアに留学しましたが、日本で言うところの歌舞伎のようにちょっと敷居が高いですね。
寺本 身体面は、個人差が大きいですから一概にはいえません。しいて言うならば、日本人は欧米人や中国人、韓国人より華奢な傾向にあるかなとは思います。東京オペラシンガーズが得意とするのは、アンサンブル。生まれる声の調和や重なりから美しい歌の世界を表したいと考えています。
東京オペラシンガーズは、世界的指揮者・小澤征爾さんの「世界水準のコーラスを」という要請のもと、結成されたそうですね。
寺本 歌うこと、音楽を聴くことは、心を豊かにしてくれます。ステージを通じてそうした機会を提供できたらと考えています。
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