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脳を“見える化”し、脳パフォーマンスをスコア化できる新しい脳ドックプログラムが始まりました。東北大学加齢医学研究所の瀧靖之教授に、30歳から始める脳のスマート・エイジングについて聞きました。
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脳の萎縮は30代から始まっている!?

 

人が生まれて成長し、老いていく――東北大学加齢医学研究所では、生き物の宿命といえる加齢現象を科学的に解明し、より賢く、健やかに生きる「スマート・エイジング」を追究しています。その研究は多岐にわたりますが、脳科学と遺伝子学の領域から取り組んでいるのが瀧靖之教授の研究室です。瀧教授によれば、脳を加齢の観点から考えたとき、大きな課題の一つとなるのは「認知症」だといいます。

 

「平均寿命が84歳を超える長寿大国日本ですが、自立した生活ができる健康寿命はそれより約11年短く、その間、要介護や寝たきりで過ごす人が多いのが現実です*1。その最大の原因とされるのが認知症です。認知症は高齢になるほど発症リスクが上がります。2060年には高齢者の約4人に1人が認知症を発症すると予測されているのです*2」

 

人生100年時代を謳歌できるのも、心身の健康があってこそ。認知機能が低下し、寝たきりで晩年を過ごすのはあまり“幸せな老後”とはいえない状況です。

 

「ただし、悲観しすぎる必要はありません。この未来予測は、絶対に変えられない宿命ではありません。認知症で最も多いのはアルツハイマー型認知症ですが、遺伝的素因だけでなく、食事・運動・睡眠・ストレス・などさまざまな要因が重なって発症する“生活習慣病”であることがわかっています。最新の研究では、私たちが個人の努力で変えられる認知症リスク要因は、少なくとも40%を占めることが判明しているのです*3」

 

これからの取り組み次第で、アルツハイマー型認知症を予防できる可能性も十分にあるのですね。

 

「はい。脳のMR画像診断では、アルツハイマー型認知症は記憶をつかさどる『海馬』の萎縮から始まることがわかっています。海馬の萎縮は、早い人では30代から始まっています。認知症予防を本気で考えるなら、リタイヤする年齢になってからではなく、今この瞬間からスタートすることが大切なのです」

 

瀧教授らは、超高齢化社会の日本において“生涯健康脳”を実現し、認知症などを予防するスマート・エイジングへの挑戦に取り組んでいます。その一環として、脳をMR画像などで鮮明に“見える化”し、脳の健康を維持する生活習慣アドバイスを提供する、新しい脳ドックプログラムを考案したのです。

脳の健康状態を“見える化”する脳ドックプログラム

自分の脳を知ることができる時代へ

 

脳の健康状態を“見える化”する脳ドックプログラムでは、どのようなことがわかるのでしょうか。

 

「MR画像解析AIで、脳全体の状態が可視化されるとともに、海馬の体積や萎縮程度を測定することができます。さらに、問診・心理テスト、認知機能テストを組み合わせているので、脳健康活動のレベルや短期記憶や実行機能、注意力など脳パフォーマンスがスコアで数値化できます」

 

脳の状態やパフォーマンスレベルは、なかなか自分では知ることができないものです。MR画像解析やAIテクノロジーが進化したことで、私たちは「自分の脳を知る」ことができる時代なのですね。

 

「新しい脳ドックのすぐれた点は、同世代の脳や認知機能と比較ができることです。東北大学加齢医学研究所では、世界的にも例を見ない大規模な脳MR画像データベースを有しています。際立っている点は、有疾患者のみならず、健常者についても横断的に脳MR画像を収集し、年齢・性別・生活習慣など属性情報とも紐づけていること。また、8年間にわたる追跡データで脳がどう変わるかの検証も行なっています。健常な脳を含めた包括的なデータがあるからこそ、脳の異変をより早く察知することができるのです」

 

同年代よりも海馬の萎縮が進んでいると判明した場合はどうなるのでしょうか。

 

「これまで私たちの脳は年齢を重ねるごとに神経細胞が死滅していく一方だとされていました。しかし、海馬においては、神経細胞が新たに生まれる『神経新生』が行われることが明確にわかってきました。ですから、現時点で海馬が萎縮していたとしても、回復できる可能性は十分残されているのです」

 

海馬の神経新生をうながすには、どうすればいいのでしょうか?

 

「海馬の神経新生をうながすには、ウォーキング、ジョギング、ダンス、水泳などの有酸素運動が有効と科学的に立証されています。また、人とのコミュニケーションや趣味などのような刺激、十分な睡眠も、海馬を活性化するのに役立つこともわかっています」

 

逆に言うと、運動不足やコミュニケーションの欠如、睡眠不足などの生活習慣が長く続くと、海馬を萎縮させるリスクが高まるのですね。

 

「はい。海馬はとても壊れやすく、デリケートな部位でもあるのです。うつや強いストレスは、海馬の神経細胞を破壊し、萎縮させることもわかっています。また、肥満の人は、細身の人よりも海馬が早く萎縮するとの報告もあります。過度のアルコールや2型糖尿病、高血圧も海馬の萎縮を進行させるといわれています」

 

人生の早い段階で、自分の脳の状態を知る――脳ドックプログラムを受けることで、早期に生活習慣を改善して“生涯健康脳”を守っていく方向づけができるのですね。

東北大学加齢医学研究所・瀧靖之教授

“生涯健康脳”のためのライフスタイル変革

 

アルツハイマー型認知症の発症には、生活習慣が大きく影響していることがわかりました。しかし、ほかの生活習慣病にも共通しますが、長年積み重ねてきた習慣や嗜好を変えるのはむずかしいのも現実です。

 

「私たちの脳ドックプログラムでは、脳MR画像診断と問診・心理テストなどの結果を解析し、受診者の状況に合わせた『生活習慣アドバイス』を提供しています。その人に合わせた運動量や頻度、とるべき栄養素など生活習慣の改善を提案し、どのような効果が期待できるかの医学的メカニズムまで説明します。

 

また、受診者はフォローアップアプリでも、自分の脳MR画像や診断分析をチェックしたり、最新情報を受け取ることができます。ゆくゆくは、アプリでライフログを記録したり、生活習慣の改善目標を設定するなど、“行動変容”をうながすサービスにつなげ、生涯健康脳を維持するサポートができればと考えています」

 

その場かぎりで終わらせず、ことあるごとに自分の脳をチェックして、最適な生活習慣を学ぶ“続けられる”しくみも提供しているのですね。脳ドックプログラムは、どんな人におすすめですか?

 

「自分の脳に興味がある人は、ぜひ受けてみてほしいと思います。30歳以降になったら、一度は受けてみてほしいですね。それをきっかけに、海馬を活性化する生活習慣に切り替えていければ、健康はもちろん、仕事のパフォーマンスやライフスタイルの充実にもつながると思います。生活習慣が変われば、1年単位でも海馬の体積増加が見られることもあります」

 

生涯健康脳の第一歩は、脳ドックプログラムを受けることから。自分の脳のレベルを知るだけでなく、認知症をはじめ将来的な生活習慣病の予防にもつなげることができるのが最新の脳ドックのすごいところなのです。(取材・文/麻生泰子)

BrainSuiteのプレスリリースはこちら

 

*1 厚生労働省HPのデータ:平成28年の男女の健康寿命及び平均寿命から算出

*2 二宮利治他「日本における認知症の高齢者人口の将来推測に関する研究」(平成26年度 厚生労働科学研究費補助金特別研究事業)

*3 G Livingston et al.: Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report of the Lancet Commission. The Lancet Journal.vol.396, ISSUE 10248:413-446, august 08, 2020

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