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AED をリュックに背負って出勤する村井満日本サッカー協会副会長。AEDを普及させ、誰かのために行動できる共助の社会づくりを、自ら率先して取り組まれています。

7分に1人が心臓突然死で亡くなる日本。身の回りにこそ必要なAED

日本サッカー界の中心的存在である日本サッカー協会(JFA)で副会長を務める村井満氏は、リュックにAEDを携えて、東京・お茶の水にあるJFA本部まで通っています。
 

「私がAEDを持ち歩くようになったのは、2018年にAED財団の顧問になったのがきっかけでした。日本で心臓突然死で亡くなる人は1年に約7.9万人*1。1日にすると約200人、7分に1人のペースで亡くなっています。救命には5分以内のAEDによる電気ショックが必要とされますが、間に合わないケースが少なくありません。もし、そこにAEDがあれば、救えた命がある――現状を知れば知るほど、『私の目の前で人が倒れたら、命を救う行動ができるだろうか?』と自問するようになったのです」
 

誰かが倒れたとき、AEDがすぐ近くにあるとはかぎらない。そう考えると、自分がAEDを携帯するのが確実だという結論に至り、村井氏にとってAEDは一緒に連れ歩く存在となったのです。
 

「AEDは私の体の一部です。約1.5キロのAEDですが、リュックに背負って歩くことでいい筋トレになります。移動中も『この電車で誰かが倒れたら、蘇生のために必要となる場所を確保できるだろうか』『119番通報と車掌への連絡をまわりの人に頼まなければ』など、“万が一”を想定するようになりました。
 

    サッカー観戦や旅行、国内外に出張に出かけるときも、AEDは一緒です。日本では駅や商業施設で見かけるようになってきましたが、海外ではまだ普及していない国もある。もし、あのときAEDがあれば……という思いを抱えて生きる人を一人でも少なくしたい。そう考えて、毎日AEDを持ち歩いています」
 

AEDは公共施設に置かれていて、自分には関係ないものと思われがちです。しかし、実は心停止の約66%が家で発生*1しており、公共施設やオフィス等だけではなく、通勤中や家の中など、すぐ手の届く範囲にあることが、大切な人の命を救うことに近づきます。

サッカー界から社会へ。AED救護体制を浸透させたい

日本のサッカー界は、AEDをはじめとする救護体制を先進的に取り組んできたことでも知られます。その端緒となったのは、2011年8月2日、松本山雅FC所属の松田直樹選手が練習中に心肺停止で突然倒れ、搬送先で亡くなったことでした。
 

「松田選手の死は、私の中でも忘れられない出来事でした。じつは私自身、28歳のときに2歳の息子を原因不明の乳幼児突然死症候群(SIDS)で亡くしています。息子はその日の夜まで元気に過ごし、妻と私の間で眠りについたはずでした。――あのとき、私にできることはなかったのか、といまだに考えつづけています。
 

当時、AEDがまだ現在にように普及しておりませんでした。でも、今はAEDという一般の方が使える数少ない医療機器が広く普及しています。次の段階は、助けを必要する人にAEDによる救命を確実に届けられる社会をつくる。それが私の使命だと思っています」
 

AEDをより身近に、みんなのための公共の医療機器として社会に浸透させたい。そう考えて村井氏はJFAの副会長を務めるかたわら、AED財団の顧問に着任する決断をしたのです。
 

「もちろん目の前で誰かが倒れたら、どこまで処置をしていいのか戸惑う人も多いと思います。でも、その人に電気ショックが必要かどうかは、AEDが判断してくれます。どうか安心して、迷うことなくAEDを使ってほしい。そして、人から人へ救命のバトンをつなげられる社会をつくれたらと思います」
 

現在、日本のサッカー界では選手や関係者にとどまらず、スタジアムの観客やサポーター、さらには地域にまで救護体制の構築を広げる取り組みに力を入れています。
 

「横浜F・マリノスでは、ペットボトルを使った心臓マッサージの体験会を開催しています。名古屋グランパスでは、救急救命を学ぶ中部大学生がAEDやSOSボタン を携えて観客席を巡回し迅速な応急救護が行えるようにしています。また、ヴァンフォーレ甲府では、バックスタンド側にAEDを携行したで救護ボランティアを配置しており、実際に心肺停止に陥った女性観客を救命した事例もあります」

*新型コロナ感染症対策で、現在中止しているものもあります
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とりわけ、サッカーは激しいぶつかり合いや、ボールが身体に直撃したり、全力で走り続けることから、身体的リスクと隣り合わせのスポーツでもあります。健康な人でも、心臓の真上に何らかの力が外から加わることで心臓震盪が起こり、心臓突然死に陥るケースがあります。だからこそサッカー界は率先して救護体制の取り組みに力を入れてきたのです。
 

「サッカーに関わるすべての人の安全と健康を守ることが、私たちJFAの使命です。サッカーは世界的に人気の高いスポーツで、FIFA加盟国は211カ国にのぼります。国連の加盟国が193カ国であることを考えると、いかに世界中の多くの人たちに愛されるスポーツかがわかります。みんなが愛好し、注目するスポーツだからこそ、救護体制の大切さをしっかりと発信していきたいと考えています。
 

まずはサッカーが率先しておこなう。それによって他のスポーツや学校教育の場にも万全の救護体制が浸透していけばと思います。たとえば、さいたま市では、小学校の駅伝の課外練習中に心肺停止で亡くなった桐田明日香さんの事案を教訓に、体育活動時の事故対応をまとめた『ASUKAモデル』の研修テキストをつくり、教職員に指導しています。こうした運動時の救護体制が日本全体に広がっていけばと思います」

心臓は、私たちが生きるうえで最も大切なもの

「スポーツで体を動かすことで心身が健康になり、日々の楽しみが生まれ、地域や人とのつながりも広がっていく。スポーツには、私たちの社会をより豊かにする力があるのです。AEDもまた人々の健康に寄与して、社会のつながりを深めるものとして、スポーツとともに広めていきたいと考えています」
 

村井氏は、高校時代に埼玉県ベスト8に輝いた浦和高校サッカー部でゴールキーパーとして活躍してきました。その後、サッカーから離れて、現リクルートホールディングスへ営業職として入社し、その後関連会社の社長を務めたのち、Jリーグの理事に就任。その後、JFAの副会長となり、日本AED財団顧問も務める異色の経歴の持ち主でもあります。
 

「また大好きなサッカーに関われる人生になるとは思いもしませんでした。私は人生のさまざまな岐路に立ったとき、どの道を選ぶべきかをいつも自分の心臓に問いかけてきました。簡単にできそうな選択肢はドキドキしない。絶対無理そうなこと、ありえないことも緊張しません。唯一、自分ができるかできないか微妙なライン、あるいは大事なものが手に入るか入らないかの選択肢は、心臓がドキドキと高鳴る。ドキドキする道こそが、今の自分に与えられたチャンスだと信じて、選びとってきました。
 

心臓は、いつもどう生きるかを私に教えてくれる身近な存在です。ふだんあまり意識することはありませんが、心臓は私たちが生きるうえで一番大切な存在なのです。その心臓をまもるAED を、私はこれからも持ち続けていきたいと思います」(取材・文/麻生泰子)

 

出典

*1 総務省消防庁「令和2年版 救急・救助の現況」

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