「睡眠負債」という言葉をご存じでしょうか?これは日々の睡眠不足が、借金のように少しずつ積み重なり、水面下で心身のダメージが蓄積している状態。このまま放置しつづければ、やがては仕事のパフォーマンス低下、やる気の減退、体調不良や病気といった問題を引き起こしかねません。
2018年のOECDの統計によると、日本人の平均睡眠時間は7時間22分。欧米の先進国と比べると1時間ほど短く、調査した加盟国中、ワースト1でした。
睡眠不足状態が恒常化すると、風邪を引きやすくなる、アレルギーを発症するなど免疫力低下に始まり、肥満、高血圧、糖尿病、心臓病、うつなどの病気のリスクが高まります。また、脳の機能が低下してワーキングメモリ(短期記憶)の働きが悪くなるため、物忘れやケアレスミスが多くなります。
睡眠負債は、どんな自覚症状が出てくるのでしょうか。代表的な兆候は「午前中に眠くなる」「いびきをかく」「電車などでよくうたた寝をする」「ベッドに入るとすぐに眠りに落ちる」など。
これらの兆候は、40歳以上男性の8人に1人が発症しているとされる「睡眠時無呼吸症候群」の症状と重なる部分も多く、単なる睡眠不足だと思っていたら病気が潜んでいたというケースも少なくないのです。
睡眠時無呼吸症候群(通称SAS)とは、睡眠中にたびたび呼吸が停止してしまう病気です。中年太りや筋肉の衰え、仕事のストレスなどが重なって発症すると考えられています。睡眠時の無呼吸状態は、いわば「呼吸不全」。重症のSAS患者の血中酸素飽和度は、酸素濃度のごく薄いエベレスト山頂にいるときと同程度になることもあり、体や脳へのダメージは甚大です。
熟睡が妨げられることで、日中に眠気に誘われ、仕事中のミスや居眠りから交通事故や労働災害などに発展する危険性もはらんでいます。日中に強い眠気や居眠りに見舞われることが多い人、身の回りの人にいびきを指摘されたことがある人は、セルフチェックしてみることをおすすめします。
仕事が忙しく平日に十分な睡眠時間がとれない人は、週末にたっぷり眠る「寝だめ」で睡眠不足を解消しようとする人も多いかもしれません。しかし、「寝だめ」は睡眠改善の効果はあまり期待できません。
なぜなら、週末の寝だめは、朝寝坊して昼近くまで寝てしまいがち。それによって体内時計がズレて、その日の夜の寝つきが悪くなり、月曜の朝すぐ起きられない“時差ボケ”を生みます。結果、週明けからダルいという悪循環のスパイラルに陥りやすいのです。
睡眠負債はため込まないに越したことはありませんが、忙しくて夜の睡眠時間が十分にとれないならば、「睡眠の質を高める」ことでせめて疲労を持ち越さないようにしたいもの。そのために日頃の生活習慣を工夫してみましょう。
スマホの画面から発せられるブルーライト。ブルーライトが目に入ると、脳が「昼間だ」と錯覚し、睡眠に誘うメラトニンというホルモンの分泌が減少してしまいます。寝室にはスマホやタブレットは持ち込まないのがベスト。どうしても使いたい場合は、画面の明るさをダウンさせたり、ブルーライトをカットするフィルターやメガネを使うようにしましょう。
ちなみに、ブルーライトそのものは日光の中にも含まれるもので、目を覚ましたいときには効果的。朝の通勤中にスマホでニュースや新聞記事を読むのは眠気覚ましにもなります。
最近では、睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断されたビジネスマンの中には、小型の持続気道陽圧(CPAP)装置を持ち歩くという人も増えています。CPAPとは、鼻から気道に空気を送り込むことで、気道を広げて睡眠中の無呼吸を防止する治療法です。
ハンディサイズでシンプルなデザインのCPAPが新たに登場したことで、出張先や外出先などいつでもどこでも持ち運び可能に。出張中でもしっかり睡眠をとって、昼間のパフォーマンスを落とさず元気に働くことができるようになりました。
睡眠不足は仕方ないと、あきらめてしまうのは早計。毎日少しずつ解消するための工夫や環境づくりをすることで、睡眠不足はリカバリー可能です。それが結果的に、日中のパフォーマンスを高めて、心身の健康を保つことにつながります。
人生の約3分の1もの時間を占める「睡眠」。残りの3分の2の活動時間を充実させるには、睡眠の質がモノを言います。「睡眠を制する者は人生を制する」と考え、あらためて自分にとってのベストな睡眠環境を追求してみませんか?(取材・文/麻生泰子)
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