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歯科医院にあるAEDの屋外設置を進めることで、全国を網羅する24時間のAEDネットワークが構築されています。歯科医院を“まちの健康ステーション“にすべく奮闘する歯科医の活動をお伝えします。

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「歯科医院に駆けつければAEDがある」安心を提供したい

 

心肺停止で救急に搬送された人の数は、2020年で12万5,928人*1。平均すると1日に345人が搬送されていることを意味します。突然の心肺停止は実は健康な人でも起こりうるリスクです。皆さんの住む地域や職場に2分以内に取りに行けるAEDはあるでしょうか? そのAEDは夜間や休日も使用可能でしょうか? 心停止はいつ発生するか予測できませんが、日頃から24時間使用できるAED設置場所を確認しておくことは今から始められる対策であり、それによって大切な人の命を救える可能性は確実に高まるはずです。


24時間使えるAEDの必要性に気づき、歯科医による〈AED24:屋外設置ネットワーク〉のプロジェクトを始めたのが、熊本市内で歯科医として活躍する坂元彦太郎氏(ヒコデンタルクリニック院長)です。なぜ、坂元先生は歯科医院を起点にしたAEDプロジェクトを始めたのでしょうか。


「歯科医院は、麻酔や外科手術などの高度な医療行為が行われるうえ、全身疾患を抱える患者さんもいます。そのため、万が一に備えてAED設置をしているところが多いのです。でも、かかりつけの歯科医院にAEDがあるかどうかを知っている患者さんは少ないのではないでしょうか?


歯科医院は全国に6万7,886施設*2あり、コンビニの5万5,904軒*3を大きく上回ります。歯科医院がAED設置場所として広く知られ、診療時間外にも使えるようにAEDの屋外設置を進めれば、たちまち全国を網羅する24時間AEDネットワークができあがるのです」


歯科医院に駆けつければ、AEDがある――という認識が広まっていけば、これは社会全体の大きな安心になりますね。


「そうです。歯科医院のAEDは、患者さんだけでなく、その地域に暮らす人たちの大きな安心にもつながるのです。当院では、診療時間中は院内に設置し、終了後は院外に設置して24時間誰でもAEDを使えるようにしています。その活動に賛同してくれる全国の歯科医師や歯科衛生士の仲間が増え、〈AED24〉が広がりつつあります。私たちもその活動を後押しすべく、屋外設置費用の寄付を続けています」

ヒコデンタルクリニック・坂元彦太郎院長

歯科従事者向けBLSトレーニングで患者さんを守る

 

坂元先生は〈AED24〉に加え、歯科従事者に向けたBLS(Basic Life Support : AED・胸骨圧迫・人口呼吸による救命活動)トレーニングにも力を入れています。坂元先生が代表を務める一般社団法人日本歯科医学振興機構(JDA)では、のべ3,500名(令和5年6月末時点)の歯科医および歯科衛生士に麻酔などの高度な医療行為を教える講座を開催していますが、その一環として歯科用BLSトレーニングを実施しているのです。


「運転免許教習所などでAEDを使った救命講習を経験したことがある人は多いでしょう。しかし、歯科治療の現場で起こる心停止は、路上とはまったく状況が異なります。電流の通る診療台にいる患者さんに、どう胸骨圧迫やAEDを実施したらいいか――患者さんの安全確保から口腔内のチェック、スタッフの役割分担に至るまで、歯科従事者向けのBLSトレーニングを実践しています」


もともと坂元先生がJDAを立ち上げた理由は、日本では本来、歯科で実現できる医療が十分実現されておらず、それは専門職の養成が不可欠と考えたことが背景にあるといいます。

 

「歯は80年、100年をともにする健康のパートナーです。自分の歯を保つには、虫歯や歯周組織を治療したり、歯並びを矯正したりと、歯科医の技術が必要になることがあります。しかし、それ以上に歯の健康維持に欠かせないのは〈歯科衛生士〉の存在です。歯科衛生士による専門的かつ継続的なケアがあってこそ健康な歯が維持できるのです。ところが、国内には歯科衛生士の有資格者約は約28万人*4いますが、従事しているのは半数の約14万人*5です。歯科衛生士は本来、専門職としてもっと評価されるべきだし、一生続けられる仕事なのです」


日本人の歯の健康を底上げしていくには、“歯科プロフェッショナル”としての歯科衛生士の活躍が欠かせないと坂元先生は考えています。


「歯科衛生士の業務を定めた歯科衛生士法によれば、歯科衛生士は研修機関での歯科麻酔学に基づいたトレーニングや知識習得など一定の条件を満たせば、局所麻酔などの高度な医療行為を行うことができます。そこでJDAでは、全国の歯科衛生士に向けて、臨床歯科麻酔認定歯科衛生士の講座・試験を実施し、歯科衛生士の活躍の幅を広げようと取り組んでいるのです」


患者さんの口腔の健康を守る主役である歯科衛生士の活躍を通じて、患者さんの歯と全身の健康を守り、さらに〈AED24〉で地域全体の安全・安心に貢献する――坂元先生は歯科医院を“まちの健康ステーション“に変えていきたいと考えているのです。

歯科医院は「まちの健康ステーション」

〈AED24〉で、地域の人と歯科がつながる

 

坂元先生が院長を務めるヒコデンタルクリニックは熊本市の名勝・水前寺公園近くの市街地にあります。この地域で祖父の代から歯科医を続けており、自身もまた、このまちで歯科医となることを目指してきました。


「父は私が神奈川の大学に在学中に亡くなったため、父とともに働き、歯科医院を継ぐことはできませんでした。しかし、祖父や父が地域の人に信頼されて働く姿は、今でも覚えており、子どもながらに誇りに感じていました。


自分が戻る場所はやはり熊本であり、目指すのは父や祖父と同じ地域の人に喜ばれる歯科医という仕事でした。でも、歯科医になったばかりの頃は、どうしても自分の技術をどう高めるかに必死で、〈自分〉が主語だったと思います。でも、治療を通じて多くの患者さんに出会い、患者さんから多くを学ぶことで〈患者さん〉が主語に変わっていったのです」


さらに、日本の歯科の現状を知るにつれて、歯科衛生士、歯科医など〈働く仲間〉が加わり、やがては自分たちが生きる〈地域〉〈日本〉へと広がったといいます。


「歯周病予防・治療などの歯科医療は、糖尿病や心疾患、高血圧など生活習慣病の予防など全身の健康維持にもつながります。歯科は、おいしく食べて会話できる生活を支えるだけでなく、健康寿命を伸ばすために欠かせない医療なのです。さらに、歯科医院に設置されているAEDや、歯科従事者のもつBLSのスキルは、多くの人の命を救える可能性も秘めています。


私自身、歯科の仕事が大好きで、多くの患者さんの健康を支える仕事だと誇りをもっています。その歯科には、地域の皆さんの健康に貢献できるポテンシャルがまだまだある。まずは歯科医院を起点に〈AED24〉を始めて、地域と歯科をつなぐムーブメントを全国に起こしていきたい。


その地域に歯科医を中心としたAEDのネットワークがあることで、地域の人が安心して暮らせる環境が生まれます。それが歯科医として地域にできる貢献であり、恩返しだと思っています。ゆくゆくは歯科医院を超えて、あらゆる業界で〈AED24〉が普及して命を救うネットワークが日本全体で広がっていけばと考えています」(取材・文/麻生泰子)

 

*1 「令和3年版 救急・救命の現況」総務省消防庁

*2 「医療施設動態調査(令和3年11月末概数)」厚生労働省

*3 「コンビニエンスストア統計調査月報(2022年5月度)」一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会

*4 「平成30年度事業報告書」一般財団法人歯科医療振興財団

*5 「令和2年 衛生行政報告例(就業医療関係者)」厚生労働省

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