世界でもトップクラス*1の平均寿命*2を誇っているにも関わらず、日本人は「健康な生活」の維持に必要な情報やリソースを利用するのが難しいと感じていることを知っていますか? フィリップス社は最近、13カ国の医療従事者と患者に対し、自国の医療システムについて意見を問う調査を行いました。 中でも、医療従事者と患者がどの程度、医療アクセス、医療の統合に向けた現状、コネクテッド・ケア技術の導入や利用について認識しているかを評価しました。 日本以外ではオーストラリア、ブラジル、中国、フランス、ドイツ、オランダ、シンガポール、南アフリカ、スウェーデン、アラブ首長国連邦、英国、米国が調査対象となりました。 意外なことに、Future Health Index(未来の医療環境指数:FHI)では日本は最下位に位置し、今後の医療サービスを変えていくであろう技術を、導入する準備が整っていないとされています。 日本の医療従事者が提供するケアと、健康維持のために患者が必要と感じるリソースの利用手段やそれに関する知識の把握状況には大きなギャップがあります。 調査によれば、病気の家族あるいは自分自身を自宅でケアする際に、必要な医療資源を利用できていると感じる日本人は、わずか18%とのことです。 この回答は、この質問に前向きな回答をした全体平均43%より、はるかに低いものです。 ある程度言葉の壁が原因とされているものの、多くの日本に居住する外国人が、病院を訪れた際に医師と患者間の対話の少なさに驚かされる現実をこのことは反映しているのかもしれません。 「一番驚いたのは、医師の医療知識と私の患者としての立場を前提として適切な治療法をみつけるための、医師と患者のオープンな話し合いというものが存在していないことでした。」2児の母であるスウェーデン人のErika Erikssonさんは、2度目の妊娠の際に医師とのコミュニケーションの中で感じた不安や医療的なニーズについて、こう話します。 一方で、産後ケアはドイツで経験した1人目の出産のときよりも、ずっと行き届いたものだったそうです。 コリアーズ・インターナショナル日本法人の専務取締役であるアメリカ人のJim Fink氏も、医療においては人間味のなさを感じることがあるものの、無理のない自己負担の医療保険制度はありがたいと同意します。 「よくある風邪のような単純な病気に関しては、米国に比べて治療も安価で納得がいくものです」とJim氏は言います。
しかし平均寿命84歳と、世界で最も健康な国のひとつである日本で、医療制度を運用する根本の部分を変えることに、やや後ろ向きな態度があるのも不思議ではありません。 また結局のところ、コネクテッド・ケアの実践には多額のコストがかかります。 さらに、患者の記録へのアクセス許可の範囲は誰が決めるのか、あるいは情報はいつ•どのように開示されるのか、等の個人情報や法的責任に関する懸念もあります。 そもそも、「医療の統合(integrated healthcare system)」とはどのようなものでしょう。 総合診療医、看護師、医師、専門地域看護師、患者、病院、専門家、保険会社、政府といった医療制度を構成するあらゆる要素を連携させることで、効率的なケア(診断結果やデータの共有、治療計画の統一等)を実現し、疾病の動向やプロジェクトの結果生じるコストの追跡手段を提供することにより、日本の医療保険システムを最大限に活用することができます。 ハーグに住む日本人トダニトモコさんは、オランダで経験したすばらしい医療システムについてこう話してくれました。 「BSNと呼ばれる市民サービス番号によって、すべてが途切れることなく連携しています。 税金、健康保険、児童手当等のサービスはDigiDと呼ばれる電子システムを通じて支払われます。 私の息子がラグビーの最中にけがをしたときのことです。 まずホームドクターに診てもらったところ、病院へ紹介してくれました。 病院では医師らが治療方針を決定し、理学療法士と足病医が息子の足の位置を調整してくれました。 一連がとてもスムーズな流れで、治療とケアもすばらしいものでした。 すべての患者情報は電子ファイルで共有され、関連する医師たちが簡単にコミュニケーションをとることができます。 日本でもこのような連携システムがあったら良いのに、と思います。」 FHIによれば、コネクテッド技術が利用されていると感じる医療従事者はわずか12%でした。 日本医療政策機構の代表理事を務める黒川清医師もまた、日本国内での改善の必要性について、同様の感想を述べています。 「患者のケアにはスムーズな流れがなく、データの連携や、患者が一定の検査を既に受けたのか、それとも何らかの検査がまだ必要なのかを一貫して管理する主体もいません。」 日本を始め、Global Health Index調査に登場する国々の多くに長年暮らしてきた、ホスピタリティの世界的な第一人者であるHerman Ehrlich氏はこう言っています。 「良い医師たちがいるにも関わらず、彼らの治療における共同作業が限定的であることに驚きました。 全ての医師に当てはまるとまでは言いませんが、彼らは互いに同僚のテリトリーを侵したくないと思っているように見えます。 このような現状に立ち向かうことで、医師と患者の双方に対話と関係の進展が生まれることでしょう。」 日本でインターンをしている保健学専攻のカナダ人留学生、Anna Goshuaさんは言います。 「カナダの医師は、日本の医師に比べて他の医師の診断や治療に対して批判的な印象があります。 常に医療技術を向上させ、結果的として患者の利益を生むための環境をつくろうとする意志が、この挑戦的な姿勢の所以なのです。」 現在のところ、日本は技術革新の世界的なリーダーであり、胃がんのような複雑な疾患の治療開発においては最先端にあります。 日本で10年以上暮らしているアメリカ人駐在員のDavid B.氏の話です。 「私の妻は、結腸がんのステージ3と診断されました。 そして、日本が消化器がん治療においてはリーダー的存在であることを知りました。 妻は、日本の病院で受けた類を見ない最高の治療のおかげで命を救われ、費用も米国で治療した場合にかかるであろう額に比べればほんのわずかでした。」 日本は、世界水準の医療の提供においては十二分に高い能力があります。 FHIの結果を考慮に入れることで、医療従事者は包括的で密接した治療の提供に必要なツールを確保でき、患者は医療機関での治療が終わったときにより力強く健康管理に邁進していけるような、日本はコネクテッド・ケアの基盤整備に投資することができるでしょう。 詳細なレポートについては、こちらをご覧ください。 *1 厚生労働省 平成27年簡易生命表 3. 平均寿命の国際比較 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life15/dl/life15-04.pdf *2 世界保健機構の世界保健統計2016 WHO World Health Statistics 2016 http://www.who.int/gho/publications/world_health_statistics/2016/en/