いつまでも健康に 

Healthy teeth, happy lives

インタビュー

65歳以上の高齢者が人口の4分の1を超え、世界に先駆けて超高齢社会を迎えた日本。老後を豊かに過ごすための「健康寿命」の延伸が求められる中で、歯磨きをはじめとする口腔ケアの大切さが、これまで以上に注目を集めています。こうした「高齢者と口腔ケア」をテーマに、要介護高齢者の口腔機能と日常生活、介護現場における口腔ケアなどについて研究を進める森野智子先生(静岡県立大学短期大学部 歯科衛生学科 講師)に、お話を伺いました。
高齢者と口腔ケア

“歯のない高齢者”は過去の話
 

超高齢社会を迎えた日本では今、健康でいられる期間すなわち「健康寿命」をいかに延ばすかということが求められています。それは歯においても同様で、歯科医療が行き渡り、国民全体の歯科衛生意識が高まったことを背景に、以前と比べて歯の本数を維持しているお年寄りが増えました。80歳で20本以上自分の歯を保つことを推進する「8020運動」も追い風となり、健康な歯を残すことの大切さがこれまで以上に広く周知されています。厚生労働省が6年に一度行っている「歯科疾患実態調査」を見ても、2011年の調査で80歳の1人平均現在歯数が約14本(前回調査は9.8本)、また80歳で自分の歯を20本以上保つ人の割合は38.3%(前回調査は24.1%)と4割近くにまで達しています。
歯のない高齢者”は過去の話
一方で、高齢になると身だしなみに対する意欲が低くなったり、体力や気力全般が衰えるなどの傾向が見られます。それに伴い、歯が残っていても、以前のように上手に磨けなくなることなどから、高齢者の歯周病が増えているのです。中でも75歳以降の高齢者歯周病の伸び率は顕著で、年齢とともに口腔衛生状態の悪化が進んでいる現状が見受けられます。

高齢者の誤えん性肺炎は、歯周病菌が原因
 

さらに、高齢者の健康を妨げる要因として、肺炎が増加しています。肺炎は、今の日本人の80歳以上の死因で3位にまで上昇していますが、こうした高齢者肺炎の多くは「誤えん」が原因とされています。誤えん性肺炎は、口の中の唾液や痰、食べ物が喉頭さらに気管の中に入り込み、それらに含まれる細菌が肺まで到達し、炎症を引き起こすことによって生じます。

こうした肺炎に、歯周病菌が大きく起因していることが明らかになってきました。肺に入り込んだ歯周病原性細菌をはじめとする口の中の細菌が、肺炎を起こしやすくすると考えられています。実際に、誤えん性肺炎の多くの患者から、歯周病原性細菌が見つかっています。
高齢者の誤えん性肺炎は、歯周病菌が原因

また、高齢化に伴って歯が抜けやすくなる点にも注意しなければなりません。今の50代以上の人たちは、ブリッジ治療により複数につながった歯や、金歯や銀歯などの“かぶせ物”を入れた歯を持つ人が多い。これにより、高齢者の歯が抜けるとき、1本でとれるのではなく、何本もまとまってとれてくることがあります。

 

 

特に怖いのは、それを誤って飲み込んでしまう人が増えていること。人の舌は、ある程度の重さが舌の喉側に乗ると、飲み込もうとする反射が起きます。プチトマトや粒の大きいぶどうのような大きさのものが喉に入ると、とっさに飲み込んでしまうので、異物が気管をふさいでしまい、窒息につながるリスクがあります。また、古くなって抜け落ちる歯の中には、ごっそりと菌が詰まっています。こんな歯が肺に入ると、ほぼ確実に肺炎を引き起こしてしまいます。
 

 

肺炎にかかると息が苦しくなります。食品などを飲み込むときには、健常者でも毎回わずかに息を止めるのですが、肺炎患者はなかなか飲みこむことが出来ず何度も息を止めてしまう。そのため、血中酸素濃度が下がり、ますます苦しくなって食べることを敬遠してしまいがちです。つまり、誤えん性肺炎を起こしてしまうと栄養量が減り、それにより脱水症状も起こすので、ますますご飯が食べられなくなるという負のスパイラルに入ってしまうのです。

適切な口腔ケアは、介護負担を減少させる

誤えん性肺炎を起こさないためには、歯磨きをはじめとする口腔ケアが特に重要です。実際に、適切な口腔ケアが誤えん性肺炎の予防に効果があることも証明されています。とは言え、実際に高齢者、中でも要介護高齢者の歯を磨くということはとても大変なこと。介護施設の介護職員さんたちからも、「どの程度磨けば良いの?」と歯磨きの完成度や頻度などについて、質問されることが多くあります。いくら歯を磨いてもすぐに汚れますし、なかなか成果が見えづらいのが歯磨きなのです。

そこで2014年に、静岡県内の介護施設(竜爪園)の入居者を対象に、電動歯ブラシと手で磨く歯ブラシとの成果を比較する、歯磨きの調査を行いました。すると、電動歯ブラシを使うとプラーク(歯垢)付着が大きく減少し、見た目にも分かるほど歯が綺麗になったのです。続けるうちに、歯を磨く側(介護職員)の達成度が大きく向上し、歯磨きにやりがいを感じられるようになりました。つまり、歯磨きによって入居者の口腔衛生状態が改善しただけでなく、介護職員の介護負担が減少する効果も見られたのです。
適切な口腔ケアは、介護負担を減少させる

健康な歯は、生きる活力につながる

食生活は健康を保つために何より大切なものですが、食べる行為と歯は切っても切り離せない関係にあります。歯が少なくなると、一般的には肉を食べる量が減ると思われがちですが、それ以上に野菜の摂取量が減るといわれています。肉はある程度細かく切れば飲み込めますが、野菜は噛まないと飲み込みづらい。高齢者の施設で残された食べ物を見ると、大体が生野菜です。野菜が摂取できないと、健康にさまざまな被害を及ぼすことになりかねません。

生活の中で大きな楽しみである食事を十分にできなくなると、どうしても元気がなくなってきます。「病は気から」とよく言われますが、元気がなくなると体力も気力も低下する。口腔衛生状態は、全身の健康にもつながってくるのです。
健康な歯は、生きる活力につながる

誰かと食べながら会話して笑いあう時間は、かけがえのないものです。高齢になるほど、余計にその楽しみが大切なものになります。それがなくなるというのは、本当に悲しいことです。だからこそ、日頃から歯を磨いて口腔ケアを欠かさないことはとても重要です。 歯を守ることは、大切な日常生活を守るということ。それが生きる活力につながるのです。
歯を守ることは、大切な日常生活を守るということ
【注釈】
「8020運動」
1989年(平成元年)より厚生省(当時)と日本歯科医師会が推進している「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という運動。20本以上の歯があれば、食生活にほぼ満足することができると言われている。

関連リンク
 

オーラルケア製品について
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オーラルケアと健康
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