兵庫県立淡路医療センター
川俣 技師長:当センターは、昭和31年の開院以来、淡路島の中核病院、島で唯一の公立病院として地域住民の皆さんの医療を支えています。救急医療はもちろん、がん診療連携拠点病院におけるがん診療や緩和ケアなどで、さまざまな患者さんが来院されています。
撮影の事前設定という概念自体ありません。そこが2層検出器の一番のメリットであると考えています。
放射線部 川俣 技師長
川俣 技師長:導入当時の4年前ではDual energy CTを臨床のルーチンとしてしっかりと運用している施設は、全国的に現在より少ない印象で、まだ臨床運用としては早い段階だったと私は認識していました。Dual energy CTの導入に際して、現在のCT担当者である髙田技師を含め、Spectral画像の臨床的有用性を含めたディスカッションをしたのを覚えています。もちろんDual energyのデータ取得方法についてもです。現在はIQonを導入してよかったと正直思っています。他施設からの話を聞くと、事前設定が必要なDual energy CTの場合、Dualのプロトコールを技師全員に周知徹底することが難しい状況にあると聞きます。特に救急などの症例においてルーチンでCTに従事していない技師だと、Dualの撮影設定を選ぶこと自体においてハードルが上がるからだと考えます。よってDualで撮影していない施設が多いと思います。しかしIQon Spectral CTの2層検出器技術は、検査の前に特殊な撮影設定が必要なく、全ての症例でSpectral画像を取得できます。とりあえずIQonで撮影していればSpectral画像を得られ、撮影の事前設定という概念自体ありません。そこが2層検出器の一番のメ リットであると考えています。特に私が有用であると思う症例は造影検査です。造影検査のリスクとして造影剤漏れがあります。穿刺の段階でルートからの逆血をしっかり確認していても血管外漏出のリスクは少なからずあります。そのような症例に対して2層検出器では全ての症例に対してSpectral画像が得られるために、少量の造影剤が入っていれば追加の造影剤を注入することなく診断可能な画像が得られます。また、土地柄、高齢者が多く椎体や大腿骨の頸部骨折も多く、そのような症例に対してもSpectral画像は重宝しています。IQon Spectral CTは診療や画像診断に対してアウトプットの多いDual energy CTです。
魚谷 医師:基本的には、通常の造影検査全例や外傷を疑う症例に対して、技師さんにIQonで撮影してもらい、さまざまな症例においてSpectral画像を使用しています。造影症例であれば、EVAR後のIodine no Waterを使用したエンドリークの鑑別、MonoE低keVの造影効果向上による消化管出血の出血源検索、腎機能低下患者 に対する造影剤の減量やダイナミック遅延像でのコントラストの向上が挙げられます。実効原子番号画像とIodine no Waterでは肺動脈血栓塞栓症、VNCであれば脳血管治療後の出血か造影剤化の鑑別などで有用と考えています。また、単純画像であれば、カルシウム抑制画像を使用した、不顕性骨折や腱断裂の評価などに使用しています。造影剤の低減に関しても当院ではかなり浸透していて必須となっています。
放射線診断科部長 魚谷 医師
カルシウム抑制画像を使用することで、患者さんだけでなく放射線科スタッフのワークフローも向上しています。
魚谷 医師:当院の整形外科ではカルシウム抑制画像による依頼が多いです。整形領域ではカルシウム抑制画像を読影に使用することで骨折や骨髄浮腫が検出できれば、MRIを撮像せずに保存加療にしています。手術が必要な症例であればMRIを追加で撮像するという流れになっています。今までMRIを撮像していた症例も、カルシウム抑制画像を使用することで患者さんだけでなく放射線科スタッフのワークフローも向上しています。
魚谷 医師:Spectral画像の出力に関しては技師さんに頼っている部分が大きいです。Spectral画像の有用な症例に関しては技師さんの方でPACSに飛ばしてもらい、従来画像と比較しながら読影しています。SpectralでThin-slice やMPRが読影で必要となった場合のみ私の方で別途ワークステーションで作成するといった運用となっています。
魚谷 医師:技師さんに作成してもらったSpectral画像を従来画像と並べて見ているので、読影時間が長くなったと感じたことはないです。技師さんにはSpectral画像のルーチン化といったところで頑張ってもらっています。
当院では、低エネルギー画像を使用することで、診断能を担保したまま低侵襲な検査が可能となっています。
魚谷 医師:当院での造影剤低減のルールとしては、eGFR30~39の患者さんには造影剤30 %減でMonoE60 keV画像を作成、eGFR30 %未満の患者さんでは造影剤50 %低減で55 keV画像を再構成するルールを設けています。MonoEの低エネルギー画像を使用してもノイズレベルが担保されているために画質劣化が少なく、診断能が低下すると感じたことはないです。当院では、低エネルギー画像を使用することで診断能を担保したまま低侵襲な検査が可能となっています。また、個人的には遅延像での低エネルギー画像は最近よいなと思っています。例えば、肝血管腫であれば遅延相で染まりますが、造影剤を低減した症例において、実質と同等の造影効果となる場合があります。しかし、そのような症例に対して、MonoE低keV画像では明らかに造影効果のあ る血管腫であるといったことがわかります。
魚谷 医師:VNCでは少なからず造影効果が残ることを考慮に入れ、症例によって当院では単純画像の代用として使用しています。小児患者さんで単純かつ造影撮影で被ばくを抑えたい場合は単純を省いてVNCで代用することもあります。また、膵がん患者さんへのフォローや腹部の術後の精査など、さまざまな場面で使用しています。
当科では診療科に、24時間Spectral画像を中心とした画像提供を行っています。
放射線部 吉岡 技師
吉岡 技師:1日のCT検査数は、シングルエナジーCTのIngenuityCTとIQonの2台で70~80件程度行っています。検査内容は、単純撮影が7割、造影が3割となっています。基本的に造影検査はIQonで、単純撮影でもIQonが空いていればIQonで撮影しています。CT検査全般でIQonを優先して使用しているのが現状です。夜間を含めた救急症例も、もちろんIQonで撮影しています。当科では診療科に、24時間Spectral画像を中心とした画像提供を行っています。
吉岡 技師:常にSpectral画像が得られるといった点が大きな有用性です。技師長からのお話しでもあったように、2層検出器のIQonは事前の設定なしにSpectral画像を得られる点は、現場でDual energy CTを使用する技師からすれば大きなメリットです。当センターでは、症例に応じてプロトコル内にSpectral画像を組み込んで診療科にSpectral画像を提供しています。もちろん追加でSpectral画像を作成して提供する場合もあります。夜間帯においては、プロトコル内のSpectral画像で完結する場合もありますが、不慣れな技師においてはその追加画像を提供する場合は困難です。しかし、IQonで撮影してさえいれば、翌日に追加でSpectral画像の提供も可能となります。そのようなところが2層検出器の有用な点だと思っています。
高画質な従来画像が得られるといった点も、画像診断において重要であると考えています。
放射線部 髙田技師
髙田 技師:IQonの導入と関係があるとははっきりいえないですが、造影検査自体は年々少なからず増加しています。技師長からのお話しでもあったように、淡路の医療圏は高齢者が多いので腎機能が悪い患者さんが多数いらっしゃいます。そのような患者さんに対してMonoEの低keV画像を使用することで大幅に造影剤の減量した低侵襲な検査を実施しています。また、フィリップスの管球は高出力なために、高体重な患者さんにおいても高画質な従来画像が得られるといった点も画像診断において重要であると考えています。また、魚谷先生の話しでもあったように、圧迫骨折などでSpectral画像のカルシウム抑制画像ではMRI同等のコントラスト画像が得られるために、そのような症例に対してMRIを撮像する頻度はほとんどなくなり、Spectral画像で完結しています。夜間当直において、そのような点でSpectral画像は技師のワークフロー向上にも役立っています。
症例によってプロトコル内にSpectral画像を事前に組み込んでいるので、画像再構成といった点で大きな負担はありません。
髙田 技師:症例によってプロトコル内にSpectral画像を事前に組み込んでいるので、画像再構成といった点で大きな負担はありません。しいていえば、臨床科の先生方もSpectral画像がほしいために検査数のウェイトがIQonに偏るといったところですが、その辺りもSpectral画像の有用性をもとにうまく臨床に落とし込み、症例を振り分けて運用をしています。
髙田 技師:導入してから1か月で、個々の症例におけるSpectral画像のルーチン化は決まりました。当科では、導入前からSpectral画像の有用性について、論文をはじめいろいろな勉強会に参加し情報を集めて準備をしていました。そしてIQonを導入してからは集めた情報をもとに読影医の先生方にはエビデンスを提示し、ディスカッションをさせていただき、現在の運用の形となっています。また、月1回のミーティングで新たに有用性が報告されたSpectral画像についてもルーチンで追加する場合は報告することを放射線科内では徹底しています。現在、整形外科領域でのCTオーダー内にカルシウム抑制画像が記載されており、なくてはならない存在になっています。
運用を始めてSpectral画像の有用性については各診療科に個別に説明を行いました。現在、整形外科領域でのCTオーダー内にカルシウム抑制画像が記載されており、なくてはならない存在になっています。脳外科においてもコイル塞栓術後の症例でVNCを使用することで造影剤か出血かが鑑別でき脳外科からの評価もよいです。また、造影剤を腎機能によって大幅に低減しているので、その点においても臨床科からの要望は多いです。造影剤を低 減することで注入圧が下がり、穿刺針のゲージを細いものに選択でき、穿刺も容易になり血管外漏出のリスクも減少するため、看護師の負担も軽減していると考えています。最近では、MonoEを使用した心筋評価を行っています。心筋評価ではMonoE低keVを使用することで、明瞭に損傷心筋を観察することができ、冠動脈撮影の後に少し待って撮影するために非常にスループットもよいです。通常はMRIで評価する心筋をCTで得ることで鮮度の高い冠動脈に加えて心筋を評価し、循環器領域におけるワンストップ検査が可能となっています。
放射線部の皆様(左から倉本技師、吉岡技師、髙田技師、坂東技師)
IQon スペクトラル・Ingenuity CT-淡路医療センター